不機嫌なドルチェ

□第2章 タルト・テ・ヴェルト
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私の勤める洋菓子メーカー『SAMIZO』商品企画室は、都心から西に電車で40分ほどの学園都市にあります。

最寄り駅を降りると、真っすぐ南に向かって桜並木で有名な大通りが広がっているの。

入社したての頃は毎朝早くから訪れているお花見客と一緒に歩いたわ…なんだか凄ーく懐かしい。

ピンクの花びらのトンネルは無くなり、青々とした若葉が涼しい木陰を作って、朝のひと時が凄く気持ちいい。



今日はいつもよりかなり早い時間に駅に着き、大通りを急いで走りました。

『パティスリー・ジュリエット』では年に5回季節にちなんで我が社の専属パティシエ、浅生史信さんの新作が発売されるんですよ!

大勢のお客さまがご来店されるのでホールやキッチンのスタッフだけでは当然手が足りません。

パティスリー担当の商品企画室のメンバーはもちろん、本社からも大勢応援が来るんだ!



駅から歩いて15分、そろそろ赤いレンガの洋館が見える頃なんですが…なんだこれはっ!

観たこともない人・人・人!の行列!

通りにはセレブな香水の香りが満ちています!

前もって聞いてはいたけど、これほどとは…



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