不機嫌なドルチェ
□第8章 マカロン・フランボワーズ
1ページ/8ページ
洋菓子メーカー『SAMIZO』の主力商品は焼き菓子です。
詰め合わせのマドレーヌやクッキーは、デパートや駅、空港のお土産コーナーで売り上げを伸ばしています。
春は特に卒園式や送別会のお餞別品としても沢山の注文をいただいているんですよ。
「なんだぁこりゃあっ!」
事務所に史信さんの声が轟きました。
手にした菓子折りの箱帯に、王子の顔写真がドーンと載っているのです!
「この写真のおかげで『マドレーヌ・ジュリエット』は売上倍増で、デパートに特設コーナーが出来ているらしいですよ!」
私は笑いを堪えて史信さんを宥めました。
「こんな恥ずかしいモン、ウチの店には置くなよ!」
「怒らないでくださいよー!」
とは言え、自分がこんな目にあったら私も外を歩けません…
更に王子が不機嫌な理由…
和香さんが本社の通販事業部の応援に行ったきりなのです。
「立山のエロジジイが和香を拉致っているんだ!」
「仕事なんだからヤキモチ妬くな!」
御曹司も呆れ顔です。
「和香が通販事業部の仕事までやる必要無いじゃん。」
「売れ行きの動向が知りたいって、自分から頼んでいたんだ。」
*