不機嫌なドルチェ

□番外編6 御曹司はサンタクロース
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次の日、『パティスリー・ジュリエット』のある洋館の二階、洋菓子メーカー『SAMIZO』の商品企画室のドアを開けると、珍しいことに朝から史信さんがソファーでまったりと座り込んでいた。

それもそのはず、横には婚約者の和香さんがちょこんと並んでいたのです。二人でまたウェディングプランのカタログを眺めて朝からイチャイチャしていました。

「おはようございます。朝からお熱いですね、ひゅーひゅー!」

「ありんここそ、昨日は一日中そーちゃんとラブラブしていたんだろ?めっちゃツヤツヤしてるぞ!」

「フミ!セクハラおじさんみたいなこと言わないの!」

和香さんにたしなめられても、史信さんはニヤニヤするばかり。

「ウェディングドレスは決まりました?」

「うーん、和香に似あうドレスが多すぎて決められない!」

「お式の時の白いのと、お色直しの赤いのでいいでしょ?」

「二着だけ!?もっと着てみなよ!二度と無い機会なんだから!」

女の子が悩むならともかく、史信さんの方が熱心にドレスを選ぶなんて、この二人ならではですよ。

「楽しみですねー、三月のお式。」

散々揉めながら教会での結婚式をあげることに落ち付いて、それからは一日でも早くと史信さんは忙しいお仕事の合間を見てはあちこちに問い合わせ、ちょうどキャンセルが出た式場がとれたのです。

「なあ、そーちゃんとありんこはいつ結婚するの?そーちゃんならとっとと先走って入籍だけでもすると思っていたのに。」

「それは……惣一郎さんにはまだ何も言われていないんですよ。」

気にはなっているのです。家まで買って同棲生活を始めて、なのに惣一郎さんの口から『結婚』と言う言葉がピタリと出なくなってしまった。

「年末でお仕事が大忙しだからね。きっとそーちゃんのことだもの、知らないうちに何もかもお膳立てして結婚式を開くわよ!」

最近はまた本社でお勤めしている和香さんが慰めるようにそう言った。

「はい、惣一郎さんにはまたビックリさせられると思います。」

私は元気を装ってニコリと微笑んでみせた。



「絶対そーちゃんの心変わりとかじゃないから心配しないでね。」

史信さんがキッチンに戻ったあと、和香さんがそっと私に話しかけてくれました。

「惣一郎さんが……その、結婚を考えていないとは思っていないんです……エッチも相変わらず濃厚で、昨日も一日中くたくたになるまで何度も抱かれて、身体の隅々までキスされて……」

「みさとちゃんがっ!そんな話をするなんてぇぇっ!」

「あ、ごめんなさい!フミさんとはいつも具体的な話もしているんですケド……」

「きゃー!」

和香さんは真っ赤になって両手で顔を隠した。あら?史信さんから聞いている和香さんは……そのぉー、もっとエッチなひとかと思っていたんですよ?

「あのね、私もチラっと聞いただけで本当のところは分からないけど……そーちゃんのお父さんがどうも二人の結婚に難癖をつけているようなのよ。」

「社長が……?」

惣一郎さんのお父さんは、言わずと知れた洋菓子メーカー『SAMIZO』の代表取締役(つまり社長)、佐溝陽一郎さんです。

「反対の理由が分からないって、少し前にそーちゃんがぼやいてるのを聞いたんだわ。」

「もしかして、私が惣一郎さんに相応しくないからでしょうか!もっと会社のためになるご令嬢と結婚をすべきだとかで反対されているんでしょうか!どうしましょう、私はここで潔く身を引いた方がいいんでしょうか!?」

「みさとちゃん、落ち着いて!」

慌てふためく私を和香さんは必死で宥めてくれました。



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