業火の果て

□第15章 風に舞う雪の花
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彬従の愛撫以外、何一つ記憶は残っていなかった。

―――苦しい恋をする事無いよ……

柊の言葉が何度も華音の心を行き来する。

―――忘れよう、アキのことなんか……

この仕事に没頭することで、気持ちを振り切ろうと心に決めた。



祐都はシャワーを浴び、ふーっとため息を吐いた。

ベッドに腰掛け、バッグの中を探った。

明日の華音の誕生日に渡そうと買ったブレスレットの箱が入っていた。

―――明日、好きだって、ちゃんと言おう……

箱を手にしているだけなのに、ドキドキと胸が高鳴り、身体が熱く火照ってくる。

突然、バッグが振動した。

携帯電話が着信を知らせていた。

画面を見て息を飲んだ。

彬従からだ。

祐都は躊躇った。

しばらくすると電話は切れた。

履歴には何件も彬従からの不在着信が連なっていた。

「何だろう……」

急に不安を覚えた。

5分もしないうちにまた彬従から着信があった。

迷わず祐都は電話に出た。

「お前今どこにいる?」

いきなり彬従はそう言った。

「何の用だよ!」

「彩乃おばさんに聞いたぞ。華音と一緒なんだろ?」

―――母さんのおしゃべりめ!

思わず母を呪った。

「仕事でホテルに泊まっているんだよ。」

「俺、今ホテルカザバナのエントランスにいるから。」

「何でここにいるって知ってるの?」

祐都は唖然とした。

「華音に逢わせて。」

彬従は頑として言い張った。

「あんな事やっておきながら、よく逢わせてなんて言えるな!」

「誤解されたままじゃいられないっ!」

「勝手なこと言うな!」

「教えてくれないなら、ホテルの部屋全部、片っ端から華音を探して歩くぞ!」

―――アキならやりかねない!

祐都は頭を抱えた。

「とりあえず、俺の部屋に来て。落ち着いて話そう。」

自分の部屋番号を彬従に伝えた。

すぐに厳しい表情の彬従が現れた。

「華音は逢いたがらないと思うよ。」

祐都は念を押した。

「分かってる。あいつ、携帯も着信拒否してるから……」

「携帯?華音が携帯持ってるの?」

「シュウがプレゼントした奴だよ。」

自分がその事実を知らずにいたことに、祐都は愕然となった。

「華音の部屋、教えて。」

「辞めておきなよ。」

「ちゃんと謝りたいんだ……」

彬従はうなだれた。

「……俺も一緒に行く。」

祐都は折れた。



華音の部屋のドアをノックした。

「俺だよ、ちょっといいかな。」

「ヒロト?どうしたの?」

疑いもせずに華音はドアを開けた。

「華音……あのね……」

戸惑う祐都を押しのけ、彬従は強引に華音の部屋に入り込んだ。

「二人だけで話をさせて。」

目の前でバタンとドアが閉じられた。

祐都は呆然とした。

ドスンと大きな音と共に華音のわめく声がした。

「華音!華音っ!」

ガチャガチャとドアノブを回したが、開くことはなかった。

「……帰って。」

彬従が短く叫んだ。

言われるがままにヨロヨロと自分の部屋に戻った。

ベッドの上にある華音へのプレゼントが心を打ちのめした。

「俺は何故こんなことを……」

祐都は箱を思い切り握り潰し、壁に叩きつけた。



彬従は突き飛ばされた。

背中を打ちつけ、痛みに顔を歪めた。

「出て行って!アキなんか大嫌いっ!」

怒りで顔を真っ赤にし、華音は彬従を睨みつけた。

「話くらい聞いて。」

「聞きたくない!」

「沙良にキスしたのは本当だ。言い訳はしない。」

「キスだけじゃないでしょ?」

「キスだけだ。信じて。」

彬従は華音の腕を掴んだ。

「おはようやありがとうと同じただのキスだよ。」

「アキの言い訳なんか聞きたくない!」

「華音にするキスとは違うんだ!」

あっという間に口を塞がれ、舌を差し入れ絡められた。

息が止まる……

大きな手が乳房を揉み上げた。

「華音こそ、シュウを抱いたくせに……なんであいつの胸で泣くんだよ!」

「抱いてなんかいない!」

「でもあいつと寝ただろ?」

「シュウ君を慰めただけよ。」

「俺じゃない男に抱かれるなよ!」

「ズルいよアキ……話をすり替えてる……」

彬従はまた華音の口を塞いだ。

乱暴に吸われ、息が出来ない。

身体中を荒々しく弄ばれ、芯が煮えたぎる。

「イヤっ!もうアキなんか忘れる!」

華音は力任せに突き放した。

「忘れさせるか!」

軽々と華音を抱き上げ、ベッドに運んだ。

上から覆い被さり、唇を重ねた。

「俺がどれだけお前を好きか、分かれよっ!」

ブラウスのボタンを外し、ブラを剥ぎ取り、乳房を吸った。

スカートを脱がせ、下着の中に手を入れ、華音が待っているのを確かめた。

「やめて!アキのバカっ!」

*
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