天狼の彼方
□第2章 三人の彬従(アキツグ)
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「アキが髪を赤くしたせいで、試合の時に相手チームにからかわれて、必ず揉めるんだ。」
健都がため息を吐いた。
彬従と健都は同じ中学でバスケ部に入っていた。
「俺のバスケ部を潰す気か!」
「卒業して何年経つんだよ!蓮のチームじゃないだろ!」
「俺の代は最強だったぞ!」
「おいおい、いい加減にしないか。」
見かねた祐都が遮った。
「相変わらず、アキがいるとうるさいな。」
クスクスと柊が笑った。
「柊パパ、蓮が偉そうにするからだよ!」
「アキがガキのくせに生意気言うからだ!」
蓮は大人げなく噛みついた。
「もう辞めなさい。お母さんがまた心配するよ。」
大神は彬従を後ろから抱きかかえた。
「ユウタ先生は俺の味方?」
「俺はいつだってアキの味方だ。だけどケンカは良くない。しかも今はお母さんのお通夜なんだ…」
「…ごめんなさい。」
大神の腕にもたれ、彬従はうなだれた。
天日彬従は棺に手をかけ、彼の異母弟を眺めた。
高塔彬従は睨み返した。
「アンタ誰なの?なんで俺と同じ顔?」
「はじめまして。君と同じ父を持つ、君の兄だよ。」
「兄貴なら蓮一人で十分だ!」
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