天狼の彼方
□第4章 赤髪の少年
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「こんなにソックリな他人はいないよ。」
父はふわりと微笑んだ。
「同じこと、お兄さんって人にも言われた。」
「そうか…チビあきに逢ったのか…」
苦しげに彬従は顔を歪めた。
「髪、長く無かったか?」
倒れる寸前の残像が蘇った。
「蓮にバリカンで剃られたんだ。」
息子はムッと頬を膨らませた。
「シュウの子だよ。覚えているか?」
祐都は彬従のそばに座った。
「ああ、シュウから話は聞いている。高塔の家でアキと兄弟みたいに育って来たって…」
自分をまじまじと見つめる赤ん坊の頃の蓮を思い出し、クスクスと笑った。
大神雄太に連絡すると、彼は息を切らせて駆けつけた。
「アキっ!」
彬従の顔を見るなり、大神は泣き崩れた。
「ユウタ…心配掛けてごめん…」
「いいよ、無事に目を覚まして良かった…」
「ユウタ先生、泣かないで。」
赤髪の少年が心配そうに大神を抱きかかえた。
「ああ、アキ、良かったな。ずっと待ってたお父さんに逢えて…」
しかし、少年は戸惑うように大神の胸に顔を埋めた。
「父さん……どうして俺達に逢いに来なかったの?」
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