天狼の彼方
□第6章 帰郷
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「会社はどう?迷惑掛けてごめん。」
「心配するな。何とかなるさ。」
しかし、彬従の抜けた穴を埋めるのは至難の業だった。
「父さん!」
爆音と共に息子の高塔彬従が現れた。
「あれ、柊パパもいる!」
「よぉ。相変わらずにぎやかだな。」
息子は嬉しそうに、父親と柊の間に割り込んだ。
「毎日来てるけど、部活はやってるのか?」
「早退けさせてもらって、あとはケンに任せているんだ。」
「ケン…ヒロトの息子だね。お前達も親友なんだな。」
「うん!アイツは最高!」
弾けるような笑顔を見せた。
「父さん、差し入れ持ってきた!」
コンビニで買ったメロンパンが入っていた。
「ねぇ何か欲しいものある?」
彬従は息子の頬を撫でた。
「…オレンジケーキが食べたいな。華音が良く作ってた。」
「いいよ、蓮に作ってもらうね!」
「蓮?」
柊が不思議そうに尋ねた。
「今日帰ってくるんだよ。」
「なんで?」
「知らない。ユズママが朝言ってた。」
その日は担当が小池だったため、午後6時きっかりに二人は病室を追い出された。
「また来るね、父さん!」
息子が笑顔で抱きついた。
*