記念BOOK
□のどかな日々
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あれからどれぐらい経ったのでしょうか。
水質調査のために来たクリスタル・レイクで、私はジェイソンと出会った。
出会ってそのまま連れて行かれた。いえ、付いて行ったという方が正しいでしょうか・・・
ジェイソンによって連れて来られた私の一日は案外のどかなもの。
朝、目が覚めれば私の顔を覗き込んでいるジェイソンと目が合う。
私は小さく微笑みながら「おはよう」を言う。
するとジェイソンは嬉しいのか私に抱きついてきて、頬擦りをした。
・・・ちょっとホッケーマスクが痛いですが、そこは我慢です。
何だか子供がじゃれついているようで、無化に出来ないんです。
「ん?あぁ、魚を取ってきてくれたんですね」
ジェイソンは私が起きる前に食料を調達してくる。
それは湖の魚だったり、時には何処から持ってきたのか、少し血で汚れた袋の中にある食料品だったり・・・
今日は新鮮な魚だったらしく、私は笑顔で「有難う」と言い、外に出る。
まだ外は寒くて、私は軽くクシャミをした。
するとジェイソンは慌てたように私の背中をさする。
「ふふっ、大丈夫ですよ。少し寒かっただけです」
私が何か病気にでもかかったと思ったんでしょうね。
心配してくれているジェイソンに微笑みかけながら、私は焚火をする。
焚火の周りに背の高い石を並べ、焚火の上に多い被せるようにフライパンを置けば、簡易キッチンの出来上がり。
包丁で魚の処理をして、少し前にジェイソンが何処からか持ってきたオリーブオイルや塩コショウで味付けして、フライパンで焼く。
しばらくして美味しそうな匂いが漂い、私は二人分の皿にそれを盛りつけた。
「さぁ、召し上がれ」
私の言葉にこくりと頷いたジェイソンは周囲に視線を巡らせてから、ホッケーマスクに手を掛けた。
・・・ジェイソンが素顔を見せてくれるようになったのは、実につい最近のこと。
最初は私が料理を作っても、何を言っても、マスクを取ろうとはせず・・・
けれど料理を拒否したわけではなく、私が寝静まった後にきちんと食べてくれていたらしい。
ジェイソンは素顔を見せて私に怖がられるのが嫌だったのでしょうね・・・
けれど私はジェイソンのその目を綺麗だと思った。
そもそも今更だとも思った。
だって、出会ったばかりのジェイソンは血に濡れた凶器を持った殺人鬼だった。あれと比べれば、素顔なんて可愛いもの。
少し前に私は絶対に怖がらないとジェイソンにその旨を伝えれば、ジェイソンは恐る恐ると言った様子で私に素顔を見せてくれた。
その時の私は笑顔で「有難う」と言って、ジェイソンを優しく抱きしめた。
「・・・ん?おや、もう食べ終わったのかい?」
ぎゅっと抱きついて来たジェイソンに私は苦笑を浮かべる。
ジェイソンは案外甘えん坊で、何かあるごとに私に抱きつく。
それが嫌なわけではないし、拒否する理由もないわたしはそれを受け入れている。
他人が見れば異常な光景なのかもしれないが、私はジェイソンを放ってはおけない。だから傍にいる。
「ジェイソン・・・」
綺麗な瞳をこちらに向けているジェイソンの頭をそっと撫でながら、私は微笑んだ。
「今日も、二人でゆっくりしましょうね」
「・・・・・・」
こくこくっと頷いたジェイソンの瞼に軽く口づけ、ジェイソンを抱き締め返した。
END
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