PARIS ほか

□Am I right?
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若者らしい、いかにも捨て身の愛情表現だと、ショウはほんの少し呆れ、ほんの少し案じ、ほんの少し訝り、甚だしく心揺さぶられ、ため息をついた。

この青年は、ショウの昼も夜もすでに自分のものであることを知らないのだろうか?
四六時中、チャックのことを考えているのに。そうは見えないのだろうか。

「礼拝には来なさい。私はかまわないから」
「ほんとうに…?」
「君がいるからといって説教に差し支えたりはせんよ」
「プロフェッショナルだな…。ありがたい。ほんとは礼拝のときのあんたを見るのは好きなんだ」
「…なぜ」
「美しいからさ。神に真っ直ぐ向かっているあんたは…ほんとうに美しいんだ。知らないのか?」

チャックの言葉はショウの胸に突き刺さり、後を引く鈍い痛みを残した。

もう私は、神に真っ直ぐ向かうことなどないのに。
チャックは無邪気だ。ほんとうに無邪気だ。
その無邪気さに私は心打たれ、また、心傷つけられるのだ。

…だが…
選んだのもまた私自身だ。
何に背いても彼を愛することを。

「チャック…」

カウチに寝そべり、彼の胸に頭を凭せかけているチャックの柔らかな髪を梳き、額に口づける。
この青年に憐れみを垂れたまえ…と、己が背いた神に祈りながら。

「…不思議だな」チャックが呟く。「おでこにキスなんて子供騙しだと思ってたけど、あなたからだと愛を感じる」
ショウは、子供騙しと愛との関係がどうもよく分からないと思いつつ、再びチャックの額に唇を触れ、子守唄のように囁く…
「額へのキスは敬意を表すものだ。知らないのか?」
「へえ…知らなかったな…頬っぺたは?」
「親愛の情だ」
「ふつうだな…唇は?」
「知ってるだろう?」

ショウが軽くしかめた眉をチャックは指でなぞろうと手を伸ばした。瞬間、反射的に閉じられた瞼にチャックはハッとした。
彼の間近に晒されたショウの一瞬の無防備さに彼は確かに欲情した。

チャックは、ためらわずショウの唇に唇で触れ、顎を捉えながらショウの咥内に更に舌を割り入れて息も止まりそうなほど吸い上げた。
「…ん…チャッ…ク…」
ショウの喘ぎ声は何てセクシーなんだろう…とチャックは思う。聖職者だなんて、どうなんだ?神様だって不埒な考えを起こしそうじゃないか?
けど、ほんとうに不埒なのか?
俺はショウを愛している。ショウも俺を愛してくれる。キスも抱擁もセックスも当然のことじゃないのか?

「ショウ…俺はあなたを心から愛してるし、いつもいつもあなたが欲しいと思ってる…」

チャックは、ショウの服の中に手を差し入れ、滑らかな素肌に指を這わせた。
「あ…、っん……ふ…」
…まったく…罪深い喘ぎ声だ…。これでは、俺は正しき道に導いてもらえないな…。もっとも、正しき道なんて知ったことじゃないが…

「…あなたは、俺を愛してくれてるのかな…ほんとに愛してくれてるのかな…」
信じているけど、信じられないんだ、ショウ…
「俺があなたを欲しいと思うのと同じくらい、あなたも俺を欲しいと思ってくれてるのかな…」
チャックはショウの体の隅々に官能を呼び覚ますように触れながら、満たされず囁き続けた。

「…チャック……あ…っ…」

年若い恋人に淫らに溶かされて、ショウは自分を恥じながらチャックを恨めしく思う。
…愛していなければ、私がこんなことをさせると思うのか…?チャック…
若さとは愚かさだ、とショウは熱に浮かされた頭でぼんやり考える。その愚かさにどうしようもなく惹かれているのだと。

…チャックは、自分の腕の中でうっとりと苦悶の表情を浮かべる恋人をたとえようもなく美しいと思い、もっともっと彼を手に入れたいと愛を凝らすのだった…


2012.10.15


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