勾玉

□闘いと祈り
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共に歩みたいと思った人がいないわけじゃない。
愛した人がいないわけじゃない。

ただ、同じ時間を共有していると、なぜかすれ違いが多くなって、いつの間にか別の道を歩いていた。

一人で生きていくのだと悟ったのは、何時だったろうか?
時だけが流れていく。
無意味に。

時の流れが変わったと気づいたのは何時だったか?

あの日あの時、あの一枚の写真を見た時から。

『崩れ落ちる兵士』

戦場カメラマンの撮った写真は衝撃的だった。
そして気がつく。
この国は戦争をしているのだと。
国を二分して戦っているのだと。

私には二つの道があった。
この世界に生き続け、独裁者の僕となるか。
銃を取り、自由を求め闘うか?

私は前者を選んだ。
そして闘い続ける。迫り来る黒い塊と。
不器用だから。
歯痒いほど頑固で不器用だから、この世界しか生きられないから。

多くの仲間が後者を選び、散っていった。

内戦は数多くの命を奪い、人々に心の傷と壁を残したまま、独裁者が勝利した。

私の選択は正しかったのか?
独裁者の治めるこの国で、その手の上で踊る道化を演じることが。

後悔はしたくない。
私は選んだのだから、残ることを。
人の命がいとも簡単に失われていく戦争に加担したくないという選択を。

だが、そんな私もまた、目の前の黒い塊の命を奪っているのだ。

迷いは死に繋がる。

生きるために…この世界で生きていくために、迷いは捨てよう。

私の選択は正しい。
生きて闘うことが正しい。

ただ、闘いの前に祈ろう。
戦場で倒れた友のために。
たとえわずかな時間ではあっても、道を違えた友のために祈ろう。


今日もまた、私の闘いの場に静かに向かう。



END


*次ページは、張恵安の(大家としての)権力乱用コメント
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