PARIS ほか

□Am I right?
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ショウに会いたい。
チャックは、抑えきれない思いに心が震えた。数年前、この町を後にしたときは、彼につり合うような成功者になって戻って来るつもりだった。しかし、今は…彼は敗北者だが、そんなことは問題ではないと彼にはもう分かっていた。

チャックは、くるりと踵を返し、大股に歩きだした。弁護士に会ってことの詳細を確認して、できれば叔父の空き家に居を定めて、それから…。それから、それから…

案の定、死んだ叔父は借金はないものの財産もほとんど遺していなかった。財産と呼べるものは生前住んでいた家一軒。弁護士はチャックに家の鍵をくれた。彼にはそれで十分だった。
この町に実際着く前は、遺産に少なからず期待していたのだが、あまり期待しすぎてはいけないと抑制していたおかげで、さほどがっかりせずに済んだ。結局ろくでなしの血筋だ。借金がないだけ、家一軒遺しただけ、立派なものだ。俺の親父に比べれば。
とにもかくにも、彼は、腰を落ち着ける目処ができたのだ。ショウ・ムーアのすぐ近くに。

チャックは叔父の家に荷物を放り込むと、食料や日用品を調達しにスーパーマーケットに向かった。
そんなこともあろうかと予測はしていたが、陳列棚の間で店員の制服を着た昔馴染みに声を掛けられた。根掘り葉掘り質問されるのは鬱陶しいが、情報収集のいい機会だと思うことにした。幸いチャックは自分のことは最小限に、相手からは最大限を引き出す術を心得ていた。最初からそうなら俺は成功者になれたろうに。

チャックは、はたして、最も知りたかったこと──ショウの身辺について──をかなり詳しく知ることができた。相変わらずの田舎町だ。プライバシーなどありはしない。おそらく、夕食の時間までにはショウも俺が戻ってきていることを知るだろう。


2012.09.12
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