PARIS ほか

□Am I right?
4ページ/10ページ


朝になってみると、重い頭を抱えながらも、夕べあんなにチャックのことを思い出したのは、彼が町に戻っていると聞かされたせいだとショウは考えることができた。

恋心など気の迷いだ。娘と同じ年頃で、自分と同性で、町一番の不良だった彼に?
ああ、しかし…思いはやすやすと彼のもとへと舞い戻ってゆく。彼の魂は今も迷いの中にあるのだろうか。私と同じように。

ショウはあの日覗きこんだチャックの瞳を思い出していた。
あのとき、何を思ってか、にわかに耀き渡った瞳。何も理解するいとまも与えられず唇に押しつけられた彼の孤独…どうしようもなく愛を求めていた。
そして、私は…彼の孤独を絶望を自分の魂のそば近く抱きしめたのだ…

ショウはチャックの面影を自分の頭の中から逐うことがどうしてもできなかった。
…確かに、私は、あの迷える魂を神の御手へと導きたかった。清廉な望みだ。何も恥じることはない。しかし同時に…神よ、許したまえ…この体が、この心が、震えるほど望んだのは…。

ショウはうっかりコーヒーに注いでいた湯をこぼしてしまった。
フィルターの上部から溢れた濃い色の湯がテーブルクロスに染みていく。彼は呆然とその様子を眺めていた。…私は何をしているのだろう…

彼は故わかぬ悲しみに取りつかれていた。この悲しみは、と彼は考える。チャックのものか。私のものか。思えば、あのとき…彼の口づけに応じてしまったあのときから、この悲しみはずっと私の中にあるのだ。

彼は、私に会いにくるだろうか。私は彼に会いたいのか。
彼に会えば、この悲しみの正体がわかるのだろうか。


2012.09.13
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ