PARIS ほか

□Am I right?
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ショウは説教台に凭れかかるように佇み物思いに沈んでいた。
チャックはどうしているだろう…
私に会いにくるだろうか。それとも、町のどこかで偶然出くわすのか。
ショウは驚かされるのは嫌いだった。もっとも並大抵のことでは驚きはしないが。チャックは並大抵のことだろうか?

説教台から身を起こし十字架のキリスト像を仰ぎ見る。
私の心の平安はどこへ…。そう思いかけて、彼は自嘲ぎみに笑う。何を大袈裟な…この町を出ていった若者が戻ってきただけのことだ。夢やぶれて。あるいは、夢から醒めて。

だがやはり、彼のことを考えてしまう。チャックはどんな大人になったのだろう。

彼の父親は“飲んだくれのろくでなし”で──これはショウの意見ではない。町の人間の一般的な見解だ──、彼の母親は彼がまだ読み書きもできないうちに、たまたま町にやってきたセールスマンと駆け落ちした。
チャックが不良少年として思春期を過ごしても誰も責められまい。そんな家庭環境で育ったわりには、彼は礼拝にも欠かさず来ていたし、警察の厄介になるほどのこともしなかった。

当時はアリエルのことを心配する余り、私は彼に対して公平さを欠いていたようだ…

ショウはそんなふうに考え事をしながら、家への道を歩いていた。
見ると、背の高い若い男が家の前に立っている。
誰だろうなどとは露ほども思わなかった。むしろ、チャックだと頭が認識する前に背筋に電流が走った。

彼が全く無防備な表情で歩みを止めたのと、チャックが振り返って嬉しそうに笑ったのと同時だった。
その笑顔は、たちまち、懐かしさと戸惑いと不安に彩られた控えめな微笑に変わり、ショウはチャックがそんな表情を見せる人間になったことに驚いた。そして、自分は彼にどんな顔を晒していたのかと訝った。


2012.09.19
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