PARIS ほか

□Am I right?
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「ご無沙汰しています。ムーア牧師」

チャックは、“ショウ”と呼びたかったが、それをためらわせるくらいの礼儀作法は身についていた。ショウもそのことに気がついて嬉しい驚きを感じたが、すぐに、当然のことだ、遅いくらいだと思い直した。

「やあ、こんにちは、チャック。本当に久しぶりだね。戻ってきていることは聞いていたよ。元気そうで…」

ショウの声を聞き、幾分他人行儀ではあるが心の深さを映す微笑みに迎えられ、チャックは有頂天になった。
ショウを思う気持ちに羽が生えてチャックの腕を持ち上げた。

その両腕でショウを掻き抱いたとき、この町を出ていく前に同じように彼を抱きしめたことを思い出し、胸が詰まった。
どれほど、このときを待ちわびていたことか…!

ショウは、一瞬何が起こっているのか理解できなかった。
彼には男兄弟はいないし、父は何年も前に他界していたから、もうずっと長い間、彼を抱きしめる腕は、華奢で優しい柔らかい女性の腕だけだった。

堅くてしっかりとした強い腕。

この思いがけない突然の抱擁に、彼はため息を漏らした。
…理性が情動にひれ伏し、体の芯に火がともされ、風に煽られ燃え上がる。…

彼は、ショウ…と耳許に熱っぽく囁く声を聞いた。
嵐に体が浮き上がるのを感じた。人に見られたら…と懸念が掠めたが、もう遅い。

扉の鍵を開けたのはショウだが、彼を抱きしめキスを降らせながら後ろ手にまた扉を閉めたのはチャックだった。

「…あなたを忘れたことはないよ、一瞬たりと…」

キスの合間の告白に心が震え、縋る神を求めるが、唇から漏れるのは祈りの言葉ではなく欲情に駆られた喘ぎ声ばかり…

あなただけを見ていたと、愛していると、あなたが欲しいと…本当に彼が言ったのだろうか?
私の空耳ではないだろうか?

ショウが訝りながら、ふと目をあげると、チャックの耀く瞳に出会った。
…この目を見たことがある…
ショウは記憶を辿る。すぐに思い出す。町を出る前に彼が残した口づけを。彼の瞳の耀きを。

「ショウ…俺を認めてくれ…」
「…あっ……ぅ…あ、あ…」
認めろとはどういう意味だ。一瞬脳裏を掠める疑問符はしかし、形にはならず、快楽に溶けてゆく。

…かつて…

苦い輝きに満ちた青春の日々に…ショウに愛を乞うた友の、名前すら思い出せないけれど…

確かに彼は愛し方も愛され方も知っていた。
神への告解の仕方も。


2012.09.19
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