ROMA

□協奏曲
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窓硝子が結露する寒い朝、カーテンを開けると天気は良くて冬の日差しが柔らかい。
隣で眠るちぎの穏やかな寝息にほっとする。
…何だか嫌な夢を見たような…夢の中身は覚えてないけれど…

東京公演から帰宝し、もう数日で集合日という休日の朝。

まだ早いから、もう一度布団に入って、ちぎにぴったりと寄り添い横になる。
間近に見つめる彼女の顔はほんとに綺麗…
眠るちぎに時々そうするように、そっとその眉をなぞる。
彼女は、少し眉をしかめて、うーん…と呟くが起きはしない。
愛しくて胸がいっぱいになる…彼女の肩に顔を埋めて、細い体をぎゅっと抱きしめる。
「…まっつさん…」
「あ…ごめん、起こしてしもて…」
反射的に身を引くと、ちぎが逆にしっかりと抱きしめてきて…
「…最高の起こされ方だと思うよ…」
「まだ寝る時間あるよ?」
「今、何時…?…いい匂い…」
私を抱きしめながら、ゆっくりと背中を撫でたり脚を絡ませたり、ちぎは伸び伸びと思うまま、寝ぼけている。
「七時…くらい」
「ああ、時間あるね…」
琥珀色の澄んだ硝子玉のような瞳に出会ったかと思ったら、瞳は閉じられ、唇にしっとりとキスが来て…
「…まっつさん…キスしていい…?」
やっぱり寝ぼけてる…
「もうしてるやん…」
溜息を誘う口づけを続けて、彼女はふふ…と笑う。
「ROMA…移り香してるみたい…時々…コマがね…そんなこと言ってた…」
「…あ、そうなんや…」
それって焦ったり青ざめたりすべきことかも…でも、ちぎは少しも気にしてないみたい…それとも、寝ぼけてるだけ…?
そうする間にも、ちぎの手は優しく柔らかく私の体を撫でていて、ほんとに溜息が漏れる…
「…まっつさん…感じてね…」
「…あ…」
彼女の指が下着の中に入ってきて、思わず震えた。

…気がつくと、ちぎは私を背中から抱きしめるような形になっていて…
「…ちぎ…」
「…足りない…」
ちぎの淋しげな呟き…
「何が…?」
「まっつさんを…私のものにし足りない…」
「…いや、そんなことないと思うけど…」
「心の話…」
そんな声で話さないで…
「…なおさら…私はちぎのものやん…」
「そうだけど…それが本当に分かるのは、まっつさんだけだから…」
「信じてへんの…?」
悲しくて、ちぎの腕に触れている指が震えた。
これは罰なんやろか…
「信じてるよ…」
ちぎは、私の指の震えを止めようとするかのように、私の手を握りしめた。
「…ごめん、忘れて…ちょっと淋しくなっただけ…何でか分かんないけど…」
私はもう堪らず…振り返って彼女を抱きしめキスして、キスして、キスして…
「ちぎ…愛してる…」
気持ちを測るようにお互いの瞳を覗き込んで…
彼女の瞳はやっぱり淋しげに澄み切っていたけれど、優しくて…愛してる…と語るよう…
…彼女は私の瞳に愛を見てくれただろうか…私の名を囁き、堪らないように抱きしめてくれた。…
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