ROMA

□協奏曲
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それから、二人でプレゼントを開けた。まだ夜が明けきらない暗い部屋でキャンドルを灯して。
ちぎからのプレゼントは指輪サイズの小箱。
「"A"とか"Y"のチャームやないやろね」
「それもちょっと考えた」
それは、舞台で使えそうな指輪だった。オペラピンクの衣装に合いそう…
「めっちゃ嬉しい…ありがと、ちぎ」
「喜んでもらえて良かったあ。発想が貧困でさ…他に思いつかなかったよ」
私からのプレゼントの小さな包みをまず振るちぎ。
「こら、割れたらどうすんの」
「この重さで、この質感で、割れ物はないよ」
がさがさ袋を開けるちぎ。どきどきした。
アーミー風のベレー。
「…カッコいい?」
早速キザって被って見せてくれるちぎ。まだ、どきどきする。
「一目見て、絶対ちぎに似合うと思って…」
空のはずの袋から、まだカサッと音がして…不思議そうに覗き込むちぎ。もう、心臓が止まりそうだった…
「…!!うっそ…!」
ちぎのひっくり返った声に思わず笑ってしまったけれど、同時に何故か泣きたい気持ちにもなる…

…私は、この人が好きで好きでしょうがない…
求められ肌を合わせ、恋に落ちて…恋焦がれ、切望して、手に入れて…本当はもういっときも離れていたくない…
こんな気持ちを、この人は分かってくれるだろうか…受け止めてくれるだろうか…

「こ、これって…、この部屋の鍵…?マジで…?」
「そんなに驚かんといて…」
泣いてしまうから…
「…いいの?入り浸っちゃうよ?」
「入り浸ってほしいからあげるねん」…私はまだ微笑んでいるだろうか…
「うわ…めまいしてきた…」
「大げさやな…あ…」…涙出てきた…
「まっつさん…」
「何でもないねん…ちぎが好きなだけ…」
「…まっつさん…」
彼女は私を強く優しく抱きしめて…私もまっつさんが好き…愛してる…と。
「鍵…すっごい嬉しい…。まっつさんは軽はずみな人じゃないから…恋人として認めてもらえたんだって…」
「認めるとか…やないよ…」
ちぎが好きなだけ…
いつも傍にいてほしいの…
こうやって抱きしめていてほしいの…
「…まっつさんが私の前で泣き虫なのもね…嬉しい…」
「そんなに泣いてへん…」
「うん…分かってる…」
こうやって…琥珀色の澄んだ瞳が愛しげに見つめるのが、ずっと私ならいい…
そして、私の目に映る愛しい影も、ずっとずっと、この、ちぎならいい…

2012.03.08


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