ROMA

□夢幻
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初日前に髪の色を整える。
今回、史実とは違うらしいけど、物語の筋の都合で、まっつさんの陛下と同じ髪の色で嬉しい。

「まるきり同じやないねんで。近い色ってだけ」
「分かってるよ。気分の問題」
「まあ…私もちょっと嬉しいけど」
「…わお、雪降りそう」
「なんでや…」
ちょっと笑って、まっつさんは私の髪に優しく触れて。
「…ちぎの髪は柔らかいなあ…」
「わあ…すごい気持ちいい…」
まっつさんの手に頭を擦りつけて甘えてみた。
「頭触られると眠くなるやろ?」
「かもね…ていうか、うっとり…」
キスしてほしくて、彼女の瞳をじっと見る。
…キスして、まっつさん…

「ちぎ…」
永遠に解けない謎を秘めた漆黒の夜の瞳…
その闇にしめやかに匂いたつROMAは、彼女の吐息のように甘い…

「まっつさん…」
「…ちぎ…」

蕩けるような甘い甘い口づけを交わして…
繰り返し愛しい名前を囁き合って…

「…私ねえ…陛下の台詞で、すごい好きなのあるの」
ベッドの上で抱き合って、まっつさんの腕枕…私は彼女の細い体に腕を回して抱きしめて…
「ふぅん…なに?」
まっつさんの指がゆっくりと髪を梳く。
「初めて心を捧げ…ってやつ」
その優しい感触が天国のように気持ちよくて…
「うん…言うのも楽しいよ」
…思わず漏れたため息…
「ちょっと、妬ける…」
その行方を追って、彼女を見つめ、唇にキスを。
「…誰に妬いてるん?マリア・マヌエラ役はおれへんのに」
くすりと笑う唇を指でなぞって。
「…まっつさんの陛下の頭の中にはいるでしょ?」
「ちぎがね」
まっつさんが舌先で私の指を舐めた。
「えっ?ポーザ!?」
…全身痺れた。
「何でやねん…マリア・マヌエラやん。私の中ではちぎやねん」
まっつさんはくすくすと笑いながら、また舌先で誘うよう…
「ドレス?…」
私も舌先で彼女の舌をつついてみる。
それは一瞬にして、ディープキスになった。
「…ドレスやないけど…思いの持ちようやから…」
ああ、もう、言葉にするのももどかしい…
思いの持ちようか…思いをこめて、口づけを…

「私は、まっつさんに…初めて心を捧げた…」
「…そうなんや…」
「本気にしてないね…?」
彼女の白いシャツの裾から手を入れ滑らかな肌に触れた。
「…ぁ…ちぎ…」
「まっつさんが初めて心を捧げたのは誰…?」
開いた襟元の…白い首筋から鎖骨に唇で触れていく。
「…ぃや…、あ…そんなん…聞かんといて…」
微かだけれど柔らかい白い乳房を手のひらで包みこみ優しく蕩けさせる。
「嘘でも、ちぎやって…言ってほしいな…」
肌の白さが目に痛くて…
「…ちぎに…心、捧げてる…よ…わかってるやろ…」
なだらな丘の真ん中あたりに小さな花の蕾のような薄紅色…
「…んっ…ちぎ…」
口に含んで濡らしたら、飴玉みたいに艶々と光ってとても綺麗…
「…まっつさん…」
愛してる…と、抱きしめながら、耳に囁きながら、彼女の肌の手触りに感じ入りながら手をすべらせて、熱く濡れそぼる彼女の中に指を入れて乞い願う…心だけじゃなく、体も捧げて…と。
「…あ…ぁっ……っ」
彼女の喘ぎ声は官能的で、たまらない気分になる。
…心も体も、ちぎに捧げて…まっつさん…
私だけのものになって…
お願いだから…
「…愛し…てる、から…」


…高みから、ふわりふわりと堕ちてくる…天使のよう…
清らと淫らと…どちらの顔も持つ私の美しい恋人…

「…疲れた?」
「うん…でも、気持ちいい疲労感…」
「良かった…。…まっつさんと一緒の舞台に立てるって、すごい幸せ…」
「私も…ちぎと同じ場所にいるのがすごい嬉しい…」
「これから舞台で毎日、まっつさんが心を捧げ…って言うのを聞いたら、私になんだって思って、きっとにやけちゃうね」
まっつさんの微笑に私の気持ちも映ってる。

幸せなの。幸せなの。幸せなの。あなたといたら。

…夢でも幻でもなく…ここに、私の腕の中に、あなたがいる…
この奇跡が永遠に続いてほしい…

愛してる…から…


2012.08.30


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