ROMA

□光
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世界は輝いている

この世界を満たす光は

彼女と私との愛


…の、はずなのに



「よろしくね、ちぎちゃん。…ちぎちゃんて呼んでかまへん?」

うわ…素敵な笑顔…

「もちろんです!壮さん。よろしくお願いします!」

もう、一発で、やられた。
壮さんは素敵すぎだ。
まっつさんとのことなんて、おくびにも出さないし。

「んじゃ、まあ、とりあえずお近づきに…肉、食いに行こか!な、まっつ!」
「また、肉ですか。好きっすね」

まっつさんも。
まるで、ただの仲のいい上級生。

「あんたら、痩せすぎやからな」
「壮さんもね」
「だから、肉やねん!」

近くにいたゆめみさんに、みきも行く?と言いながら、壮さんがまっつさんの肩をガシッと掴まえる。そんなスキンシップすら色気のかけらもない。

これが一体どういう意味を持つのか。

試されてるのは私?

これじゃ、浮気されても分からないかもしれない。
嫉妬の余地がないことが、不信の種になるなんて。

まっつさん…

私は彼女の瞳を見つめた。
そこには確かに煌めく真実があるはず。私への愛が深い奥底から光を放っているはず。

まっつさん…

救いを求めるように声なく呟くと、彼女は私を見つめて…

永遠のような一瞬

しっとりとした真珠のような光彩を私に向かって閃かせた…

「ちぎ…心配せんでも、何もないって」

苦笑して、私にだけ聞こえるように囁いた。お見通しか。

「毎日言ってくれます?それ」
私は、聞こえよがしに言った。
「何を言えって?」
思ったとおり壮さんが食いついてくれる。
「壮さんほどやないけど、ちぎも男前やでって言うたんですよ」
な、何を言うのか、この人は!
「アホか」
壮さんは呆れる。まっつさんはふふっと楽しそうに声を立てて笑う。私は一人で真っ赤になってへたりこむ。

「ちぎちゃん」
壮さんが腕を掴んで立たせてくれた。優しい笑顔。まっつさんが好きになった笑顔と同じかどうか分からないけど。
「ちぎちゃんには十年早いよ、私の前でまっつとの仲を匂わせて、まっつを慌てさせようなんてな」
壮さんも私にだけ聞こえるように囁いた。
「皆の前では知らんぷりしとき。私も知らんぷりしとくから」
でも、3人だけのときやったら好き放題してええで、と。
それって、自分も好き放題するってことですか…?壮さん…

もう、私は泣きそうだ。


よれよれの私を、ロッカールームでまっつさんが捕まえて、二人きりで。

「さっき、壮さん、ちぎに…何か言うた?」

二人きりだけど、声をひそめる彼女の顔が間近すぎて、キスしたい。キスしたい。キスしたい…

「ちぎ…」

まっつさんの指がそっと顎にかかって、唇に微かなキス。…あ…まっつさん…

「ちぎ…壮さんに…何か言われた?」

甘い囁きで壮さんの名を口にしないで…まっつさん…
でも、私を心配してくれてるんだ。仕方ないね…
仕方ない?嬉しいことじゃない。私…わがままになってる…?

「…十年早いって言われた」
「そうなん…?何のことを?」
「壮さんと渡り合おうなんて十年早いって」

まっつさんは少し黙って私をじっと見た。…水底に光る真珠…

「…ちぎ…」

微かなため息。微かな口づけ。

「十年早いちぎが好き…」

そのままの私を
愛してると言うの
この愛しいひとは



2013.09.03
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