PARIS ほか

□Yo soi Maria
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初めから分かっていたこと
この恋は破滅だと

絡みつくように立ち上る紫煙に
息を殺してお前は眉を寄せる

欲しいものはすべて
手に入れてきたとお前は言う


「私先に帰るわ」

彼にそう言ってと

「彼は待っていてほしいんじゃないかな」
「あなたが待ってればいいわ」

高慢な女
彼の望みを知りながら

「俺はがっかりする顔を見たくないよ」
「慰めてあげればいいわ」

美しく嘲笑い、細い指先で俺の顎を引いて唇に紅を移す

「そしたら彼、あなたを好きになるかも」
「マリア」
「似合うわよ、その色」

彼は俺のものにはならないだろう
追えば逃げるこれはゲームか

「マリア」

彼だ

深い瞳で女を見つめる

この恋は破滅

「待たせてすまない」
「待ってなんかないわ。私、この人と遊んでたのよ」

悪ふざけ
俺の肩に腕を絡みつかせ頬を寄せ

彼の目に嫉妬の色を見ようとでも?

俺のことなど彼は
歯牙にもかけちゃいまい

「すまないな、チギ…」

世話をかけて、と

俺を何故
じっと見つめた彼の目は
ただ漆黒

ものも言わず

けだるげに

微かな吐息に触れるか触れないかの
唇をかすめた

その口づけ

「似合うぞ、その色」

微笑すら見せず


この恋は破滅

だがどうだ?
この震えるほどの…


ああ、幸せだ
俺は今


end


 →雑感

2019.02.11


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