ROMA

□驟雨
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集合日の二日前だった。前からの約束で、園加が泊まりに来ていた。

「髪伸ばしてみたい気もするけど、絶対似合わないし」
「そうでもないんちゃう?」
「棒読みー」
コーヒーを飲みながら、そんな他愛のない会話…園加といると凄く落ち着く…。
一人でいるときより、自分らしくいられる気がする…

「まっつ、また痩せた?」
「そう?」
ちぎのほうが痩せてるけど
「まあ、健康管理はしっかりやってるんだろうけど…心配だなあ…」
「ありがと…園加もね」
うっかり彼女のことを思い出してしまって…私は少しうわの空で…

「ところでさあ………いるの?」
「…え?」
園加が遠慮がちに、
「誰か、いるの?付き合ってる人…」
「え…なんで?」
心のどこかで園加にはちぎのことを言っておきたい気がしてたけど…まさか、こんなふうに気づかれるなんて…園加は時々とても繊細だ…

「…何となく…部屋の感じかな…」
私がいつもちぎのことを思ってるから、部屋のそこかしこに彼女の影が映るのだろうか…
「…あんなぁ…園加…」
そのとき、チャイムが鳴った。

「…まっつさん…」
扉を開けた瞬間のちぎの涙に濡れた微笑に私は狼狽した。
ちぎを心配する気持ちと部屋の中の園加と。
「…どうしたん」
かろうじて、彼女の腕を引いて扉の中に入れる。抱きしめてあげればよかった…と思いながら…

ソファーに遠慮がちに畏まっている園加を認め、ちぎはハッと固まった。
私は彼女の手を握る指に軽く力をこめて、腹を括る。
「ちぎ、園加。園加、ちぎ。…園加、ちょっと、ゴメンね」
「うん、全然…」
ちぎの手を引いて寝室に連れて行った。

「…突然来てごめんなさい…迷惑でしたね」
消沈して下級生モードに入っている彼女をきつく抱きしめた。
「全然、迷惑なんかじゃないから…何があったん?」
「考えてみたら…言えないんです…」
こんな彼女を見たことない…
「私に言えないことなんてないやろ?他の誰かと寝てるとかっていう以外は」
「それ、きっつい…ありえないし…」
弱く笑う…いつもの対し方に戻った。

彼女はそして、私を見つめ
「大したことじゃないんだ…」微笑もうとして「…かおりがね…退…」
もう言葉にならず嗚咽した。
「大したことやん…」
もっと悪いことも脳裏を掠めたけど、この辛さは痛いほど分かる。

そうして彼女はしばらく私の腕の中で泣いた。
「…ごめん…もう帰る…」
「大丈夫なん…?」
「泣いたらちょっと落ち着いた…」
弱く微笑む彼女の頬にキスして、
「送ってくわ」
「いい…園加さんに悪いし…」
「園加はいいの」
園加は分かってくれる。

こんな儚げな彼女は初めてで、何だか男役の感覚を刺激された。
同時に、下級生の彼女に、いつもどれだけ甘やかしてもらっていたか痛感した。…
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