ROMA

□楽園
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最近、蒸し暑くて食欲が湧かない。
でも食べなきゃと思って食べる。
けど、まっつさんはどうだろう。
あの人、そういうとこ、もひとつなんだよね。

全ツ組の稽古場を覗くと、まっつさんがちょうど歌っていた。
中日できんぐがした役。壮さんの敵役。

…うわぁ…かっっ…こいいー…

まっつさんと目が合ったのに、まっつさんは全然反応しない。そりゃそうか。演技中だ。

私もがんばろ。



帰りにメールした。

《晩ごはん作りに行こうか?》

うちに着いた頃に返信がきた。

《明日、稽古は?》
《昼から》
《まだ何時に帰れるか分からない》
《大丈夫。寝ながら待ってる》
《来てもええよ》

まっつさんたら、もう。

《遅くなってもええよ。待ってるね》

私のメールが最後。もうまっつさんから返信はない。
こういったメールのやり取りは、まっつさんの方が切り上げることが多い。きっと私のほうが余計に好きなんだろう。それは私の自慢だ。
私が、世界で一番彼女を愛してる。…まあ、ご両親とかは抜きにしてね。

さて、何を作ろうか。




「…ぎ、…ちぎ…」
「…んー…まっつさんのえっちー…」
「ちぎっ!」

はたかれて、目が覚めた。
いい夢見てたのに。寝惚けた頭でむっとして、見ると、夢の中であんなことやこんなことしたりされたりしてたような気がする愛しのまっつさんが。

「誰が、えっちやねん」
「ええー…えっちなことしてくださると…。夢の続きかしら、これ…」
「寝惚けんな」

だんだん頭がはっきりしてきて、突然、ああ、まっつさんだ、と嬉しさが込み上げた。

「まっつさん!」

がしっと抱き着いて、ぎゅうぎゅう抱きしめて、ゆさゆさ揺らしたら、まっつさんは苦しそうな嬉しそうな声で、

「ちぎ…っ、窒息…するっ…」
「したら、マウスツーマウスで生き返らせてあげる」
「…アホっ…」
「まっつさん、愛してる!」

愛してる、愛してる、愛してる…と何回言ったか。口に出して。心の中で。数えきれないくらい。

やっと満足してまっつさんを放したら、息も絶え絶えに、「…それで…ごはん…作ってくれたん?」と、へたりこまれた。
良かった。怒ってないみたい。

「作ったよ。まっつさんの好きな卵焼き。サラダも作った。お味噌汁も」

まっつさんはちょっと頬を染めて、「ありがと」と。そして、食卓で、「これはスクランブルエッグや」と。

私は、彼女があんまり綺麗だから、反論するかわりに彼女にキスした。

後で私の夢の続きに付き合ってもらおう。…



2014.02.01
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