黒子のバスケ

□虫歯
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カチカチと鳴る時計の音が聞こえる。
時刻は夜10時。

陽泉高校の男子寮。
ワンルームにベッドと簡単なキッチン、
その他にトイレとシャワールームの備わった洗面所があるだけの小さな部屋が連なる寮。

その中の1室、紫原敦の部屋に
屋主以外のもう1つの影があった。

片目を前髪で隠した、目の下の泣きほくろがどことない色華を感じさせる青年、氷室辰也だ。

学年こそ違うが、部活の先輩後輩というだけでは説明しきれない関係は、
たいした問題もなく良好だったのだが、
今日この日だけはいつもと状況が違っていた。

「敦…」

あまり丈夫ではないパイプベッドが
ギッ…と悲鳴のような音を出す上で
氷室は紫原を馬乗りに押し倒し、
彼の顔の横で両手を押さえつけていた。

「敦…こっち向いて」

2m8cmの紫原にかかれば、
自分よりも身体の小さい氷室を退かすことぐらい造作もないように思うが、
組み敷かれ、上手い具合に関節を押さえられているため、退かすどころか身動きをとることさえできない。

「乱暴なことはしたくないんだ」

優しく訴える氷室の指は言葉とは裏腹に、
しっかりと紫原の腕に食い込んでいる。
血管が圧迫され、だんだんと手の感覚が鈍くなっていく紫原。

「敦…?俺のこと嫌いになった?」

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