過去拍手

□まさかの世界
1ページ/1ページ


ー転生物語ー


前世で24歳の時に事故で死んでしまった私は、その記憶を残したまま、また赤ん坊をやりなおすこととなった。


16歳になった今でもその時の記憶が残っているというのは、とても変な感じがする。


実を言うと、小さい頃から大人しく子供らしくない言動を繰り出す私に対して、周りの大人は


「この子は天才児だ!」


と大いに喜んだ。


いや、別に天才でもなんでもないけど。ちょっと頭の中に24歳がいるだけだけど。


そうやって、天才児(笑)であると判明したときに実は、私を学校に行かせよう、という話が出たのだが…

それは身分と、金銭の問題で無理だという結論が出された。


いやむしろ、私から「学校へは行かない、私は働く」とお願いしたぐらいだ。



なにせ私が生まれた環境はなんと、



イギリスの産業革命さながらの時代、そして、炭鉱業が盛んな町だったのだから。



それに気づいた時は本当に驚いた。

まさか自分が過去に生まれるだなんて思ってもみなかった。むしろ未来に生まれるんだと思ってたし。


しかしそれでも私は、女だてらに鉱山で働く男たちを支える女として、小さい頃からしっかりと働いた。


ここがどこの町なのか、世界がどういうところなのか、正直、学びたいと思う気持ちはもちろんある。


だけど私はそれよりも、この場所で生きるためにどうするか、を必死に考え、前世の知識を活用しつつ生き抜くことにした。






さて、そんな私には、まるで弟のように可愛いがっている男の子がいる。


その子は小さい頃に両親を亡くしており、さらに、父親については周りの大人から"詐欺師"だといわれるなかで、必死に、一人で生きていた。


そんな子供に気づいたのは、数年前だ。


その頃の彼は、本当にまだまだ小さい子供だった。


だけど、鉱山の機械工であるダッフィーさんに必死について行き、小さな身体で汗だくになりながら働いていたのだ。

正直、体力もない子供が働ける時間も少なく、彼が貰える賃金も大人の私が今日食べれるかどうかの程度。

さらに、住んでいる場所は両親が残してくれた、町から少し離れた場所にある比較的大きめな家で、1人きり。


だけど、そんな環境にも負けず、彼は必死に働いていた。


時には"詐欺師の息子"として蔑まれることもあったが、相手が大人だとしても負けずに彼は「そんなことは無い!」と必死に否定し続ける。



私はそんな彼をみて、


「ああ、なんて強い子なんだ」


と感心した。


そして気づけば彼に話しかけていて、


私は、彼のご飯係として、世話を焼くようになっていたのだ。


正直、うちも貧乏の部類に入るためなけなしの食料ではあったけど、仕事に疲れて作る気力もない子供のために、自分のご飯をけずってでも彼のために作り続けている。


そんな私に両親は最初こそ反対していた。


だが私も、そんな二人に向かってなぜ彼を"詐欺師の息子"と言うのかと聞き返し、


「親なんて関係ない、彼はただの、小さな子供だ。」


と反抗した。


反抗したのは正直この時が初めてだった。むしろこれで最後だとは思う。


そして頑なに譲らない私の考えに、いつしか二人は折れて、気づけば協力してくれるようになったのだ。


今では家族ぐるみの付き合いである。


彼も、私の事を「姉さん」と呼んでくれるし、一緒に食べる時間に、少しでも幸せを感じているようであったから良かったと思う。



だからといって、彼とは一緒に住んではいないんだけど。



なぜなら彼も、かなりの頑固者だったから。



父親が詐欺師だと言われた事を否定するために、"自分がそれを証明してみせるんだ"と、仕事が終わってご飯を食べ終えると、いつも自宅に帰っていくのだ。


ダッフィーさんから身につけた機械工としての技術を、どうやら使っているらしいけど…何をしているのかは正直分からない。


まあそれでも、そんな彼を応援しようと思う。





さて今日の彼は、夜勤だ。


そんな時はいつも、お弁当をもって職場へと持っていく。


プシュープシュー、と機会の音が鳴り響く鉱山の中に入り、奥へ奥へと進んでいく。


すると、ようやく見えてきたのは、仕事に精を出している彼の姿。



「おつかれ!」



そう声をかけると、私に気づいた彼はパッと顔を明るくして、


「姉さん!」


とこちらへ飛び降りて向かってくる。


彼の作業場は高いところもあるから、そんなとこから飛び降りるとかあぶない、とは何度も言ってるのだけど…聞かないから仕方ない。


「ほら、お弁当だよ」

「いつもありがとう、姉さん」


お礼を言ってくれるとかほんと、この子はいい子すぎる。

どうしてこう育ったの。親の顔がとてもみたい。きっといい人達だったに違いない。


そう思いながら、噛まずにバクバクとどんどん食べていく彼の姿を、ただひたすら眺める私。


しばらくそうしていたが、彼がちょうどご飯を食べ終えた時、


急に周りの機械が暴れ始めだした。


プシュー、プシュー、という音と主に漏れ出す熱い蒸気。


彼はそれに気づくと、慌ててそれを治しに走り出した。


一緒に夜勤をやっていたダッフィーさんも慌てだす。



「なにか手伝える?!」

「大丈夫!!姉さんは帰ってて!」


鉱山で働く男たちを支える女としては育ったが、機械については専門外だ。


なので仕方ない、とりあえず汗だくになった彼等のために水でも取ってこようと、一度水を汲みに行って、その場所に戻った、


その時だった。



比較的落ち着いた機械たち。


そんな中、




「親方ぁ!姉さん!空から女の子がぁ!!」





と言う、彼の声が響いた。



声のした方へと顔をあげてみれば、


そこには、


本当ゆっくりと光り輝きながら、空から落ちてくる女の子の姿が。





…あれ、このシーンどっかで見たことあるぞ?





ただのデジャヴかと、とりあえず必死そうな顔で女の子を抱き抱えている彼に向かって私は声をかける。




「おいパズー!大丈夫か………あ?」




あれ、パズー?



そして私はその瞬間、ある事実に気づいた。



「姉さん!どうしよう!」



そう叫んでいるパズーの声を聞き流しながら私は、





〜天空の城かよ!〜




と、頭を抱えるしかなかった。



昔の世界だだなんだと思っていたけど、まさかの天空の城ですか。ラピュタですか。

気づかなかったけど映画の世界にトリップですか。

よりにもよって、よりにもよって!!まあいいけども!!



それに気づいた私は、これから始まるであろう大事な弟のようなパズーの冒険を思い浮かべて、


ただただ無事を祈るしかなかった。


彼が帰ってきたら、思いっきり抱きしめてやろう、と心に決めて。




ーーーー

拍手ありがとうございました!

天空の城でした!

そろそろ毎年恒例のロードショーですからね。やってしまいましたよ。

とはいっても原作がないので私の記憶を頼りにやりましたがまあ、そこは雰囲気でお願いします。

それでは。

※拍手返信不要の方については、文頭または文末に「人がゴミのようだぁ☆」とおつけ下さい。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ