小説。
□ほんとは。(山土)土方視点
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地味だから全員気付かないだけなんだが、
山崎は実はすごい奴なんだ。
ミントンばっかしてるから俺にボコられてばっかの奴、というイメージを持ってる奴が大半だが、本当は入隊試験では成績優秀だったし、潜入も報告書は今一つなところがあるが難なくこなしている。
普段は俺の神経を逆撫でしているが、本当に辛い時はほっといてくれたり、たまには慰めてくれたりと人の気持ちっつーもんを読めてる。・・・俺と違って。
だから俺直属の監察なんかにゃあ勿体ねえ奴なのかもしれねえ。
あいつを誰かが「引き抜きたい」だとか、山崎自身がどっかへ「移りたい」とか言えば引き止める理由はないのかもしれない。
だから俺は、理由がほしいんだ。あいつが俺に直属する理由が。
あいつのミントンをボコって済ませるのも、ちょっとのミスには容赦なくツッコミを入れるのも。
ただ、あいつの落ち度を探してるだけで。
あいつの優秀さが他の奴らにバレねえように、情けないフリをさせているだけなんだ。
「副長、開けてもいいですか?お茶、持ってきましたけど。」
トントン、と障子を軽く叩く音が聞こえたあと、俺一人しかいない副長室に山崎の声が響く。
「・・・入れ。」
我ながら素っ気無い返事。
あいつは知ってるんだろうか。
今日の討ち入りで、俺がシクったことを。
俺がいなけりゃ、近藤さんは負傷せずに済んだことを。