NARUTO
□禁忌を犯して1
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穢土転生とは・・生贄をつかって死者を現世に蘇生させ、術者の思い通りに操ることができる。
二代目火影が考案し、大蛇丸が完成させた禁術
猫面で顔を隠し暗部専用の支給服に身を包み背中には刀
彼の目の前は一人の男
「アナタがこちら側に来ると言うならそちらが望むモノを叶えてやっても良いわよ」
蘇生させるには対象の人間が持つ一定量の個人情報物質(DNA)と、死者の魂を留めるために生け贄とする生きた人間が必要
「例えば藤沢春歌とかね…」
不自然な程に真っ白な顔を歪ませねっとりとした声でククッと笑った
それがとてつもなく不気味に耳に絡みつく
不快に思う声なはずなのに耳は彼女の名を聞いてからかピクリと反応をする
こんな話、耳を貸す様な話では無いじゃないか…!
なのに何故…!
「どうやら興味を持ってくれたみたいね」
沈黙を続ける僕を肯定と捉えた大蛇丸はニヤリと口角を上げる
「なんなら、試しに彼女を出してあげましょうか」
「な、に…!?」
「クク…アナタは否定出来ないって事を分からしてあげなきゃね」
対峙する二人以外は周りに人気はない。
ここは里の国境付近、よほどの用事がなければ里の人はやって来ないし任務でやって来た仲間も、きっとこの状態では気が付きはしないだろう
草や木が鬱蒼と生い茂っていて、頭上の葉と葉の間から僅かに漏れ出す光で漸く辺りがまともに確認できる
サアサアと風が靡く音と鳥の鳴き声、それから唾が喉を通る音だけが耳に入る
暗いこの場所でも真っ白な顔ははっきり分かりそれを睨みつける
穢土転生は禁術だ…
何を僕は迷っているんだ
大蛇丸の言葉が脳を埋め尽くし感覚を麻痺させてしまっている
瞳を伏せ彼女を思った
太陽のように暖かい心の持ち主でとても儚く大輪の花のような笑顔の彼女
名前は藤沢春歌
彼女は1年前、暗部の任務中に殉職した、予想外の敵の待ち伏せを受け攻防虚しく彼女以外にも数人命を落としたのだ
敵は20を超え彼女等の隊はたった数人の小隊だった、敵の数を見れば勝敗は分かるはずなのに引く事はせず勇敢に立ち向かった
それは、敵の情報を里に持ち帰る為だった
一人の暗部を里に伝える役に自分達はそれまでの時間稼ぎ、勝負は決まっていた
彼女は死を覚悟としてだった
そして彼女は死んだ
未だに彼女の事を思い出すだけで、胸の底から何かが込み上げてくる
彼女は僕の婚約者だったんだ
「…っ」
「どうやら決まったようね」
彼女が任務から帰ったら、と二人で出すはずだった婚姻届け
二人で暮らすはずだった新居
婚姻届けも新居も未だに僕の手の中にある、いつか帰ってくると信じ大切にしまってある婚姻届けときれいなままの新居も彼女を待ち続けて帰りを待っているんだ
未だにどうしても信じれなくて
どうしても受け入れる事ができなくて
現実に目を背けてばかりいる
気が付けば頬を伝う筋
それが何なのか考えるまでもない
「交渉成立ね」
辺りに不気味な声だけが響いた