喫茶店「スエルテ」

□メニュー1 スエルテへようこそ
1ページ/3ページ



 暖かな日のこと。
 神家に、1人の客が来ていた。


「また、やめたのか」

「そ、たったの2週間で」


 応接室に来客してきた男の言葉に、神泳地は軽くため息をついた。


「長く続くのかと思ったが……駄目だったか」

「まあ、無理もありませんがねぇ」


 冷たい緑茶を乗せたお盆と一緒に入ってきた、泳地の弟である水奈が告げていた。


「虎徹さんも大変ですね、オーナー代理は」


 どうぞと、水奈は微笑みながら男の前に緑茶を置いた。
 男の名は、鏑木・T・虎徹といい、泳地と水奈より年上である。


「いやいや、長年やってると意外といいもんだぜ?」

「いいお年でしょうに…」

「水奈。虎徹はまだ30代だぞ」

「いや、フォローにないってないっ」


 出された飲み物を口にし、虎徹は話を戻した。


「こう、何度もオーナーが変わると、あいつらの機嫌が悪くなっていってよ」

「あのチームのメンツだと、すぐに機嫌が悪くなるだろうな」

「態度は文句ないですけどね。個性が強すぎるといいますか」

「ま、それはそれで売れてるみたいだし。けどまあ、俺らのチームにはオーナーが必要だしよ?」

「規則だからな。だが、俺や水奈、それに壱鬼は出来ないぞ」

「そこをどーか、な! あいつらまとめられるの、お前等ぐらいだしよ!」

「そう言われましてもね……」


 カランという音と同時に、あっと水奈が声を上げた。





「いましたよ。1人だけ確実に出来るのが」





「ほんとか!?」

「ええ。明日帰ってくると連絡がありましたので」

「……あいつか。確かにオーナーに適しているが。








逆に可哀想になってくるな、虎徹達が」

「……え?」

「まあ、あの子にもやり方というのがありますから」

「なんとかなるだろう」

「ですが、とりあえず話しておきませんと。いきなりはさすがにいけませんし……」

「ちょ、ちょっと待て! 誰の事話してんだ!?」


 年長組の話に途中からついていけなかった虎徹が、横から入って尋ねた。


「そうか。お前は6年前からあいつに会ってなかったな」

「あいつ?」

「あの子ですよ。僕達兄弟の末っ子の」

「――ああ!」


 誰の事か分かりだした虎徹は、ポンッと手を叩いた。


「そっか、6年か。そんなに経ったんだな〜」

「フフ。虎徹さん、親父くさいですよ」

「やめておけ、虎徹は元々だ」

「おじさんって言われてるけど、そこまで言う事はねえだろっ!?」


 またも年長組の2人にいい様に言われてしまった虎徹は、涙目になっていた。


「とにかく、あいつにオーナーをやらせるからな。虎徹」

「……ああ、いいよ。もうこれ以上はツッコミいれねえからっ」


 言ったら繰り返しになってしまうと、カランッという音と共に思った。









次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ