喫茶店「スエルテ」

□メニュー1 スエルテへようこそ
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 〜 メニュー1 スエルテへようこそ 〜







 東京のとある商店街に、少し変わったお店が存在する。
 植物のつるが壁に貼り付けられた、二階建ての古い屋敷。一階は営業の場で、二階は店員達の休憩場所になっている。

 中は反転しており、テーブルや椅子が綺麗に並べられ、厨房へ通るカウンターまで設置されている。
 ただし、1週間ごとにお店の雰囲気が変わり続けているという。


 そんなお店の名前は、「スエルテ」という喫茶店である。




「虎徹さん、遅いな?」

「まだ言われた時間じゃないぞ、静雄」


 ある週の月曜日。
 定休日である「スエルテ」の一階に、今週の当番チームである店員達が何人か集まっていた。
 オーナー代理の虎徹から収集をかけられたからである。


「それにしても。前のオーナー、マジでやめたんだな」

「2週間だとよ。もう少し長引いてもよかったな?」

「俺は2週間以内だと思ってたぜ」


 椅子に座りながら、二人の店員が前に務めていたオーナーの事について話していた。


「それくらいにしないか。あれでもオーナーだったんだぞ」

「いや、始。お前が言えないって。フォローにもなってないぞっ」

「しかもあれって言うかよっ」


 とその時。
 カランという音に振り向くと、30代の男性とペンギンの頭を被った青年が入ってきた。


「「「「「……」」」」」

「遅くなって悪いな」

「あ、いえっ。虎徹さん、そこにいるのは……」

「ああ。こいつはうちのチームに入る事になった新人でな」

「どうも、初めまして。実験で頭がペンギンの頭になった、ペンタンです」

「「「どっかからパクッてきただろ、その名前!?」」」


 ペンタンと名乗った青年に、店員の3人ほどがツッコミを入れた。


「まじでか!」

「おい!? 真に受けるな、静雄!」


 20台前半の店員が、自称ペンタンに疑いの目を向けながら虎徹に訊ねる。


「一体どういう事なんですか?」

「実は、オーナーに言われてよ。良いって言うまで被り物を取るなって」

「そういや、オーナーの件どうなったわけっすか?」


 赤い長髪をした青年が、ふと思い出したかのように聞く。
 あっそうだというぐらいに、他のメンバーも思い出し、虎徹に目を向けた。
 自称ペンタンだけは、虎徹以外に目を移していたが、誰も気づいていなかった。


「ああ、候補があがったが。そいつ、今中国にいるらしくてな」

「候補? てかなんで中国に??」

「親友がそこに旅行していて、少し用事があるそうです」


 と答えたのは虎徹ではなく、自称ペンタンだった。


「なんで、お前が知ってるんだ?」

「水奈オーナーから聞きました。新オーナー候補推薦もあの人からですし、ですよね虎徹さん?」

「あ、ああっ」






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