RABBIT GAME

□日常からの脱却
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1日が過ぎるのは極めて早い。
当たり前といえば、当たり前なことだ。
生きている内に何度過ぎるか分からない1日が、長かったりしたら溜まったもんじゃない。

ただ、あまりにも早過ぎる気がした。

陽耶(はるや)は、寄っ掛かっていたドアと対称のドアを眺めていた。

ドアは開き、そして閉じる。
1分にも満たないこのモーションも、じっとドアだけを何も考えずに見ているといように長く感じた。
でも、それも瞬間的でしかない。

電車は揺り籠のようにゆっくりと揺れ、また乗客はゆっくりと揺らされる。

何駅過ぎただろう?
その後のことは、印象に残っていない。

ドアだけを見ていただけだと、さっきの駅の駅名も分からないし覚えていない。 

ぼんやりと浮かぶドアの隙間から見たプラットホームの地面。
窓から見えるゆったりとした町の風景。
これだけでは自分が何処にいるかも分からない。

高校通いも後1年で終了する。
なのに、普段降りることのない小さな途中停車駅はどのような順で並んでいるかも分からない。

遠くの方で良く聞く声が、次の駅を知らせている。
繰り返し流れているのに、一度も降りる駅までずっと耳を傾けたことのない車内放送。
毎日のように途中で「車掌は…」と名前を言っている筈なのに、これっぽっちもその名を思い出せない。
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