日本

□てふてふ
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人は死んだら、魂が魂と魄に別れるのだと言う。

しかし、別れぬ魂もある。
そういった魂には心残りがあって、だから別れられない。

そのままだと鬼になるから、そういった魂のしこりをほどいて、正しく別れさせないとならない。

『力を貸して』

微笑む美しい冥府の鬼に、私はそう言われた。

化け物と言われた私に。

かあさまにも捨てられた私に。

冷たい雪が降って、寒さとひもじさで死にかけた私を救って、彼女は微笑む。

『あなたに新しい名前をあげるから』

蝶になりなさい、と彼女は言った。

『あなたの名前は、瑠璃よ』



そうして私は夜な夜な魂を迎えに行く。

私はてふてふ、夜を舞う、蒼き蝶。



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