日本

□恋愛ゲーム
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「伊織、告白はうまくいったのか?」

教官室に本を届け終わってついでに先生にいくつか古典の質問をしていると、二十分くらいの時間が経過していた。
真姫がまた怒るかもしれないとやや急いで廊下を進んでいた私の耳に聞こえたその言葉に、足を止める。

見ると、放送室のドアが少し開いている。先輩を見れば先輩も気付いたようで、唇に人差し指を当てて黙っているように合図してきた。

「なんだ、黙っているなんてらしくないな。まさかフラれたのか?」
「……そんな訳ないだろ。オッケーは貰ったさ。ただ、ゲームとはいえあんなブスをしばらく恋人にしなきゃならないのかと思うと憂鬱でな」
「違いない。確かにあの女はブスだ。だからこそ、罰ゲームにはふさわしいだろう?」

この声はイケメン四天王のひとりで放送部の相原颯太だろう、確か本郷と仲が良かったはずだ。

「なぁ、本当にクリスマスまでアイツと付き合わなきゃならないのか?」
「そう約束だったはずだ。負けたお前が悪い」
「くそ……なんで俺があんな女と付き合わなきゃならないんだ。時間の無駄にも程がある」
「だから、クリスマスまででいいって言ってるだろ? まあ、クリスマスに山代と別れた後、可愛い女の子とでも好きなだけ遊べばいいさ。あのブスだってお前みたいないい男と少しの間でも付き合えるんだし、夢ぐらいみさせてやれよ?」
「……本当にお前ってドSだな」

わあ、元から信じてなかったけど、やっぱり好きじゃなかったんだー。
というか『罰ゲーム』ですか、そうですか。
ブスなのは認めるけど、流石にムカつく。

でも、放送室に乗り込もうとした私を先輩が止めて、戻ろうと目で合図してくるから。
よくわからなかったけど、何か考えがあるのだろうと、私達は気づかれないようにこっそりと図書室に帰った。



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