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宣告を受けた。
『全世界のポケモンが消えるじゃろう。それも――一週間以内に』
情報元は、オーキド博士。
トレーナー達に残された唯一の道。
それは――……。
* *
『――目標確認、距離20。数攻撃型10、防御型10。分かってると思うけど無茶はダメよ2人とも』
イヤホンから聞き馴染んだ声が流れてくる。
ここは見晴らしのよい24番道路。
ハナダシティからハナダの岬を繋ぐこの道路。
「わあってるよ!相変わらずガミガミうっせーなぁ」
『初陣なんだから仕方ないでしょ!しかも私が司令塔だなんて…!』
「そんなに嫌ならシルバーと変わりゃーいいだろーが!」
『タイプには向き不向きがあるんだからしょうがないじゃない!』
走るのに合わせて、首にかけたペンダントが揺れる。
金属製のそれは基本同じだが、中心の玉が人によって異なる。
オレのは、日光を透かす金、シルバーは同じく銀、クリスは水晶。
消えてしまったポケモン――相棒達の、代わりの力。
『とにかくゴールドあなたは攻撃型を潰すのよ!防御型はシルバーに任せて!絶対防御型に手を出しちゃダメよ』
作戦確認の折に、耳にタコができるほど聞いたセリフだ。
隣を併走するシルバーが身構える。
「見えた。しかけるぞ!」
「了解!」
片手をかざして前方を見据える。
敵は黒い人の形をしたもの。
人間では、ない。
この距離なら充分有効だ。
放つ。
導火線を引いているかのように、真っ直ぐ炎が迸った。
先頭の数個が炎に呑まれる。
――やったか?
「ゴールド!」
シルバーの鋭い声。
先頭のヤツらは炎の中から、ゆらり、と前進してきた。
「やっぱ今くらいじゃダメだよなぁ」
にやりと唇が歪むのが自分でも分かった。
今度は両手をかざす。
「喰らえっ」
先ほどとは桁違いの炎が炸裂する。
太い炎の筋は、煌々と敵の最後尾まで貫通した。
黒い列が乱れる。
――好機。
オレは乱れた隊列に単身で突っ込んだ。
* *
――あんのバカが。
思わずため息が漏れる。
あれほど単身で突っ込むなと言われていたのに。
だが、想定外ではない。
あいつはどうせ何を言った所で、きかないものはきかないのだ。
いや、きけないないのだ。
そして――。
きけないのなら、弱点になる前に最大限利用するまでだ。
あいつがへばる前に。
空気が震え、眼前で火柱が乱立する。
どうやらかなり派手に暴れているようだ。
それならば、オレのやるべきことは一つ。
『――頼んだわよ、シルバー』
「分かっている」
乱闘の場を気付かれぬよう、水壁で半円状にすっぽり覆う。
水は、炎と違いバランス型だ。
攻撃も防御も補助もそれなりにこなせるのだ。
内側からしゅうしゅうと水の焼ける音がした。
「――クリス!」
『ええ!』
応えが返り、ふわり、と数個の掌大の泡が浮いて水壁に触れる。
泡の中身は高純度の酸素だ。
泡はするり、と水壁を通り抜け内側――乱闘の最中へ入っていった。
次の瞬間。
水壁を中心に、爆発音が轟いた。
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