ゆめしょうせつ

□チャンスがくるまで
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「なーなー、みょうじ」


「ん?」


「好きだよ」


「っ…、はぁっ!?」




私の目の前にいる高尾和成という男は


一体何を思ってそんな事を口走ってるのか




「なっ、なななな…っ」


「てれちゃって、かーわい」




なんて、こういう風にいきなり好きと、
この目の前の男に言われるのは今がはじめてじゃない

むしろこれが当たり前になっていってる


一体、こいつは何故突然に、

何故私に、


考えても考えても、謎は深まるばかりで




「なーなー、みょうじー」


「…」




こいつが私のことを好きだっていうのは
冗談に決まってる

ありえないもん、私のこと好きなんて

ありえない



今までは、喧嘩友達っていうか、

私がやる事に対し、高尾は口をはさみ、口喧嘩になったり、

逆に、高尾がやる事に対し、私は口をはさみ、口喧嘩になることが日常だったのだ


こんな、


好きだなんて、言われる事はない、とずっと思ってた



「…おい、みょうじ、無視すんなよー、おいー」


「…」



一方、私は、

本当の事をいうと、高尾が好き、
だったりする

今までは喧嘩友達だったから
こうして好きだ、なんて言われる事は絶対ないはず、…なのに


この男は何を思って私に。




実際、私は、こいつの事が好きだから、
はじめて好きだと言われた時は、

本当に、死ぬかと思って、

でもなんかからかってるようにしかみえなくて、



嘘でも、冗談でも、

高尾に好きだって言われるのは嬉しいくせに


素直になれない



いっそのこと自分も好きだって、



「…言えたらいいのに…」


「ん?何を?」


「…っ高尾!?まだ、いいい、いたの…!?」


「ちょ、ずっといたわ!」


「…ご、ごめん」




まだいたのか

私があれこれ考えてる時もいたのか



「で?なまえちゃん、何を言えたらいいの?」


「たっ、たか…、名前…っ!」




本当にこの男はどうかしてる


何故いきなり名前なんて呼ぶのか
顔、きっと真っ赤になってる


嬉しいのと、恥ずかしいのと、疑問とが
気持ちをぐちゃぐちゃにさせる


「ね」


「え、えっと…、だから…っ」


「だから?」



ここで高尾が好きと言ったほうがいいのか

言ったほうが楽になるか


でも今まで高尾が私に言ってきたことが
冗談だったら…?



「えええ…、えっと…」



頭の中と心の中が
ぐちゃぐちゃして、

何て言えばいいのかわからない



「…みょうじ」


「な、…なに…?」


「すきだよ」


「っ…」


「みょうじは?」


「わ、わたしは…っ」


「…」


「わたし…」


「…」


「わっ、わたしも……っ!?」




…は、い…?

なに、なんで、


私が頑張って、勇気だして、
私も好きだよ、って言おうとしたのに


なに、これ…



なんで高尾が私のすぐ目の前にいるの


私、なんでキスされてるの



「…っ、なっ…、なにする…っ」


「今はそれで十分」


「へ?」



キスがおわったら、ぎゅーなんかしやがって

心臓破裂するじゃんか



ていうか…、


必死に私も好きって言うとしたのに
なにが、なにが…



「なにが…、今は十分よ…」


「え」


「私にも言わせろよおおおおお!!」





チャンスが訪れるまで




(まだまだ先になりそうです)

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