ゆめしょうせつ

□泣きたいぐらい
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「くっそ、また遅刻だ…っ!」



朝、全力疾走で学校へ登校。
…まあ、いつもの事。

私の家庭は、お母さんは病気で亡くなり、
お父さんの二人暮らし。



お父さんはいつも朝はやく、夜遅く、
と、あんまりお父さんと一緒にいれる時間は少ない。


朝はお父さん早めの出勤なので、
当然、起こされないわけで、

朝ごはんも、お弁当も、全部全部自分でやらなきゃいけなくて、


ついでに、何かあった時にお金も貯めなきゃいけなくて、
学校終わりに、毎日11時までバイト。



「(それが毎日続くのは、)」



正直、つらい。
つらすぎる。



かといって頼る人もいないので、
毎日が、寝不足、
そして当たり前のように、学校に遅刻










「あっれ、真ちゃん、なまえは?」



「みょうじ?…あぁ、まだ来ていないのだよ。いつものように寝坊して遅刻ではないのか?」



「もうすぐ朝のホームルームはじまっちゃうのに」



「いつもの事だろう」






「…ッ、はぁ…、おはっ、おはようっ」



「はよー、遅刻ギリギリだぜー」



「ご、ごめん…ッ、寝坊して…」



「やっぱり寝坊だったのだよ」



「へへっ」




ギリギリ朝のホームルームに間に合ったー
あー、よかった

おかげで心臓ばっくばくだよ



「たっかおー!おはよー!!」


「ほんっと、お前テンション高いな」


「いやん、そんな、だって高尾に会うのが嬉しくて」


「おー、嬉しい事言うねぇ」



高尾とは、まあ、恋人っていうか、
そんな関係で、

私が毎日寝坊して遅刻するのも、
高尾にだけは言っていて、
私の家庭の事とか、唯一知ってる人



「…っ、なまえちょっとこっち来い」


「えっ?もうすぐ朝のホームルームはじまっちゃうよ」


「いいから」


「?」



高尾に言われるがまま、左手をつかまれて、ずるずる廊下に出された


「なっなっ、なに…」


「目、」


「め、…目?」


「くまできてる」


「まじすか高尾さん」



寝る時間が少ないからだろうか
くまができてるらしい

恥ずかしいなー
いろんな人にもみられちゃったかな…



「ちゃんと寝てる?」


「寝てますよ、寝てる、ちゃんと」



寝てるっちゃ、寝てるんだ

ただ時間がないだけ

課題もしなくてはいけない、
夜ごはんも自分、お弁当も自分、朝ごはんも自分、
お父さんの分と自分の分の洗濯もしなくては

やる事がいっぱすぎて…



やばい、涙でてきそう



「た、たかお…」


「…今日、バイト休んじゃおっか」


「…え?」


「今日さ、ちょうど部活も休みなんだ。だから休んじゃお、バイト」


「い、いや…、でも…」


「でもはなし。ほら!良いとこ連れてってやるからさ!」


「まままま、まじっすか…!」




うわあ…、楽しみ

…!?
これって、デート…、だよね
放課後デートってやつですよね…!



「高尾…!ほほ、放課後デートってやつだねえ、うへへへ」


「うん、そうだね、ちょっと黙ろうか」


「うへへへへ」




デートなんてすっごい久々
ほんと、嬉しすぎて

涙でてきそうだ




「あのさ、なまえ」


「んー?」


「俺さ、なまえの、なに?」


「え、か、彼氏…じゃないの?」


「そう、俺、なまえの彼氏なんだよな」


「…?」



「彼氏として何も出来ないのが悔しくてさ」


「え…?」


「めいが、毎日必死に家の事やって、でも学校にきて、バイトして、倒れそうになるほど、頑張ってるお前を見てて、俺は何をすればいいんだろうって」


「…あ、の、高尾めずらしくシリアスな…」




めずらしい

高尾がこんなシリアスになるのは



そんなに、私の事思ってくれたって、そう思っていいのかな…?
ずっとそう思ってたって受け取っていいのかな…



「あーのさ!高尾だってバスケ頑張ってるじゃん、いつも汗かいて練習してるでしょ?私ね、そんな高尾の姿見たら、いやなバイトでもなんでも頑張れるんだよ!」


「なまえ」


「正直、つらいかって聞かれたら、つらくてしょうがない、毎日泣きたいくらい、つらくてしょうがないの」


「…」


「でもね、高尾がいるから!高尾がいるから頑張れるんだよ!」



「な、なんか逆に俺が元気づけられたみたいな…」



「あははっ、たしかに」





でも実際、違うよ高尾

元気づけられてるのは、私の方


学校に来て、高尾と一緒にいれて、頑張れるって思えるから、
いつも元気づけられてるから


ありがとう、高尾





「で、今日楽しみだねー!良いところってどこだろー?あ、プリクラ取りたいなー!」


「ん、好きなとこ連れてく、放課後楽しみにしろよ!」


「おーよ!!」





あなたの優しさが、愛おしくてたまらない



「ほら朝のホームルームはじまるぜ」


「おー、先生きちゃうきちゃう」




それが私の日常

(はぁ…、楽しみで授業も真面目に聞けなーい)

(放課後楽しみすぎて授業真面目に聞いてられっかよ)


(二人とも授業は真面目に受けるのだよ)





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