道草少女

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次の日
今日も学年対抗の時間だ。私は順調に勝ち進んで、とうとう準決勝まで上り詰めた。

ここまで残っている人間も私を含めて四人すでに学年対抗の代表にはなったが、1位まで決めるのがこのイベントの決まりだ。
私以外に準決勝に残っているのは、テニス部の三強幸村精市、真田弦一郎。そしてもう一人・・・。

わたしはこの人物と戦わなければいけない。
この人物は小杉萌という女の子。使うポケモンは珍しい色違いのサーナイトだ。
だがこのポケモンには首輪のような装飾品がついていた。そう、これは例の装置だ。

小杉が試合をしているのを午前中に見た。その時に気づいたのだ。
色違いのサーナイトなんて珍しいなんて軽く思っていたが、よくと見てみればついていた。
周りの生徒たちの声を盗み聞きしてみたが、予想通り彼女はバトルがそこそこ強いらしい。


それに、あの装置は装飾品として生徒たちに売られているらしい。だが、値段がかなりはるため、持っているのはごく一部だとか・・・。

その少女のサーナイトはみんなが言っていた通り声が聞こえてこなかった。
私だけじゃなく、ポケモンの蘭でも声が聞こえないと言っていた。ちゃんと生きているのに声が聞こえないだなんて、まるで生きた人形を見ているようだった。


そして真田と小杉の試合は真田の勝利で終わった。

真田の強さは圧倒的で、私も彼とはぜひ戦ってみたいと思った。攻撃に一切の迷いがなく、その指示をバクフーンは信じて攻撃していた。
バクフーンの方もよく育てられていて、一つ一つの攻撃が完成されているものだった。
よくこの閉鎖された学園でこんないい育て方を出来たなと感心した。


さて、そんなわけで小杉と次に戦うとしたら私はこの試合負けなければいけない。
相手は幸村精市。三強のうちの一人だ。彼もまた真田と同じくらい強いと思う。
そんな相手とは本気のバトルをしたいと思うのは当たり前のことだろう。
もう一度言うがこの試合、小杉と戦うためにわざと負けなければいけない。罪悪感とポケモントレーナーとしてのプライドが邪魔をする。

「準決勝、第二試合。幸村精市VSアコ、始め!」


審判の声が高らかと響き渡ると同時に会場の声もワッと大きくなる。

「メガニウム、日本晴れ」

幸村の使うポケモンはメガニウムだ。幸村の指示で会場が一気に明るさと温度をます。
草タイプのポケモンとしてはいい判断だ。

さて、私はどうやって彼に負けようか。

「ランターン、熱湯!」

とりあえずといった感じで攻撃を仕掛けてみる。だがきっとよけられるだろう。

「メガニウム、まもる。そしてマジカルリーフ!」

まもるは本来使ったあと一瞬すきができる。だがこのメガニウム反射神経がいいのか、すぐに攻撃にうつってきた。
マジカルリーフは泳いで逃げる蘭を難なく追い詰めた。いつもどおりならここで冷凍ビームを使ってマジカルリーフを凍らせて攻撃をするのだが、今回はしない。

蘭には悪いが攻撃をこのまま受けてもらう。

[ターン!]

蘭の苦しそうな声が聞こえる。事前にこの試合は負けると蘭にはいっているものの、戦うのも、痛みを受けるのも蘭自身だ。
ほんとうに申し訳ないと思う。

「蘭!とびはねる!」
「メガニウム、つるのムチ」

無防備にとびはねた蘭の体はメガニウムのつるのムチによって拘束されそのまま地面に叩きつけられた。

「メガニウム、ソーラービーム!」

日本晴れの影響でソーラービームは待つことなく発射され蘭に直撃した。
避ける支持も、それに対抗する技も出さずに私と蘭のバトルは、初めて負けたのだった。

審判の声を聞いて直ぐにその場から離れようとする。
だが、それは相手の幸村の「まって!」の声で遮られた。

「な、なんでしょう・・・、幸村くん」

幸村の表情は引きつっていて、どうやらあまりいい気分ではないみたいだ。

「今の試合、本気出してた?」
「もちろんですよ」
「・・・」

どうやら手を抜いていたのを見抜かれていたようだった。幸村くんは私の言葉は全く信じていないみたいで、目を鋭くしじっとこちらを見てくる。

本当のことが言えないからこれ以上言うことはない。仁王に説明して後で上手くフォローを入れてくれないだろうか。

「俺は、君の本気がそんなものだなんて信じないよ」

そう冷たく言い放ち幸村は背を向けて行ってしまった。
ごめんね。と心の中でつぶやき、蘭の体力を回復させに先生のもとへ向かった。


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