道草少女

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「うぐ……。この地震、絶対ダイゴさんだな」

先程の大きな揺れに普通に歩くこともままならず、壁を支えにゆっくり歩いていた。
やっと収まったのもつかの間、脚がさっきの揺れで思うように動いてくれない。すぐに戻るだろうが、このうだうだした時間がもどかしい。
壁から手を離し、一歩一歩を確かめながら進むと行き止まりで、床にはワープするための丸く光るものがあった。数は二つ。
どちらにいってもいいのだが、ダイゴさんにどちらへいったかをわかるようにしておかないといけない。

とりあえず右に入る。
自分の髪を結っているゴムを右のワープの近くはおいておき、私は別の場所へと移動した。


………………


ほどいた髪はずっとみつあみをしていたせいか、少し癖になっていてしまっている。そのせいか頬や腕にカサカサと当たり、むず痒い。
ついた先は先程よりも薄暗い廊下。そしていくつも部屋があるようで、どこに入ればいいか迷ってしまう。

ダイゴさんに事前にロケット団については聞いていた。だがそれは過去の事。幹部自体は減ることはなく、むしろ増えていると予想をたてていた。
おそらく、どの学園にも幹部は二、三人いるだろう。そしていずれはそいつらと戦うことになる。


廊下をただ歩いているだけでは情報収集の意味もがない。目についた扉の前で息を殺し、聞き耳をたてた。中からの物音はなにもしない。ただたんに扉が厚く聞き取れないだけかも知れないが、確認しないのとしたのでは大きく違う。
静にドアを少しあけ今度は中をうかがう。人はいない。素早く中に入り、辺りを調べる。とわいっても中はパソコンの明かりしか頼りになるものはなく、非常に調べにくい。とりあえず、パソコンから調べることにした。すでに誰かが使っていた形跡があり、楽にフォルダや文章などをあさることかできた。

色々出てきたが、目についたのは学園計画というもの。


長期で行う計画。
まず工作員として、カントーの役員や地位の高い人物へ成り済まし学園設立を計画させる。
学園をつくり、子供たちを入学させる。情報、外界との遮断、洗脳。
生徒たちに一匹のポケモンを育てさせ、ロケット団に勧誘。もしくわ、略奪。外に出た生徒には情報を漏らさないよう厳しく躾る。


更には例の装置の事も書いてある。
強化装置、洗脳装置についての報告。
強化装置、洗脳装置どちらに関してもまだまだレベルの高いポケモンには改良の余地あり。具体的にはレベル50以上。
強化装置は全体の2倍までの力を発揮できる。平均は1.2〜1.5倍。どのようにしたらそのような数値が出るのか研究中。


読んでいるうちに怒りが込み上げてくるのがわかる。パソコンの画面に思いきり拳をぶつけたい気持ちをおさえ、更に何かないかを探す。
その時だった。
後ろの方から聞いたことのある声ともに、誰かが入ってきたのだ。


「おやおや、やはりあなたでしたか。」

暗がりの中目を凝らす。ぼんやりとしか認識できないが、真っ白な白衣をまとっている時点でその人物が誰だかわかった。

「阿部誉……」
「ふふ。まぁ、すべてばれてしまっていますし、隠すこともないのですが……私、ロケット団幹部のアポロと申します。
よろしくお願いしますねアンコさん」
「私の名前!?」

ふふ、と更にわらいゆっくりとこちらに近づいてくる。私は蘭をすぐに出せるよう構え警戒するも、相手はお構いなしにやって来る。

「そろそろ外界の人達に怪しまれる時期だとは思っていたんです。まさか内部に侵入してくるなんて思ってはいませんでしたけど。
それに、病院に入院しているという子は実際にいましたしね。」

ジロリとなめ回すように見られる。あの時のギンガ団とはまた違う、ねっとりと泥々したような感じだ。その瞳はどこまでも深い黒で、ずっと見ているだけで自分の中の何かが壊れてしまいそうだ。
恐怖心に負けないよう割れてしまうくらいモンスターボールを握ってしまう。

「そんなに強く握ってしまっては、手が真っ赤になってしまいますよ。」
「大きなお世話だよ。」
「手厳しいですねぇ……」

先程から彼を観察してはいるが、考えていることが全くわからない。仁王よりも自分を隠すのが上手いのではないだろうか。
幹部の中のトップと言われるのはこういうところが関係しているんだろう。

「さて、どうすれば貴方のその硬い殻割れますかね。」
「……っ」
「貴方のメタグロス、少し小さいですよね」
「!?」

自分でも分かるくらい全身から汗が吹き出したのがわかる。

「そのパソコンであなたが見た我々の目論見、学園と装置の事だけですよね?
折角だから、三つ目を教えてあげます。特別ですよ?なんたって××を知っている人の一人ですから!」

今、目の前の男はなんといった?
××とは、まさか、あの男のことだというのか?あの時の、私たちのトラウマであるあいつだというのか?
そんなばかな、あいつはあの時のシロナさんや、ジュンサーさんたちに取り押さえられて捕まったはずでは!?

「予想通りの反応をしてくれますね、すごく可愛らしいですよ。
我々はあの男を使って究極のポケモンを作っているんです。」

その瞬間、私の意識は途切れた。


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