道草少女
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青春学園
「ゲホッ、ゲホッ!!」
ロケット弾の幹部のひとりであるラムダは既に手持ちのポケモンがいなかった。目の前にいるチャンピオンのワタルは、彼が動かないようロープでぐるぐる巻きにした。既に青春学園のロケット団廃除はおおかた終わっている。研究所らしき部屋はこれから来るであろうジュンサーさんたち警察に詳しく調べてもらうため、ジムリーダー何人かに見張らせてある。
「さて、サカキはどこにるんだ」
「・・・・」
「だんまりか」
「っへ、こんな状況で、簡単に口を開くやつなんていねぇだろ?」
「それもそうだな、だが、時間の問題だと思うぞ」
「じゃあ、その時間とやらまで俺は黙っとくかなあ・・・」
飄々とした彼は以前と全く変わっていない。こうなってしまっては話は当分聞ける気がしない。はぁ、とため息をひとつこぼすと、ラムダはニヤリと笑う。この溜息の元凶はお前のせいだと思いつつ、後ろに控えている二人に声をかける。
「君たちは彼女のもとへ向かうんだ、俺のカイリューが立海へ送っていってくれるだろう」
『え、でも俺も飛べるよ?』
「この地方には詳しくないだろ?それに余分な体力をこれ以上使わないほうがいい」
『ありがとう!!あ、でも静ちゃんたちはどうしよう・・・』
「氷帝の方と偵察組のふたりだね、通信手段はあるのかい?」
通信手段という言葉が出ると、蓮華はおもむろにライブキャスターを起動した。
もしもーし、なんて緊張感のない挨拶が聞こえる。会話を聞くとどうやら通信できているらしい。だが、蓮華だけでなく、それを覗き込んでいた流星の表情も次第に険しくなっていく。
『ねーワタルサン。氷帝はもう大丈夫だって。なんかシロナチャンとアトベ財閥の坊ちゃんが暴れまわったみたいだから、もう警察も来てるって。』
『静ちゃんたちはとりあえず氷帝のあるヤマブキのポケモンセンターにいるみたい』
『カイリューに乗せてアンコチャンのとこに連れてってくれるんなら早くみんなを拾っていきたいんだ!!アンコチャン達のとこだけ、連絡とれない・・・』
今にも泣き出しそうな顔で二人はワタルを見つめた。彼女たちの絆はこれほどまでに深いのか。これは信頼を通り越して、依存も少し混ざっているような気がする。
だが、氷帝も落ちたことがわかった。残すは立海。ワタル自身も応援に向かいたいが、生憎ここではまだやることがある。
手持ちのカイリューを三体だし、それぞれに指示を出す。
「このカイリューたちを貸してあげよう。それぞれ仲間を拾って立海へ、君の主のもとへ向かうんだ!勝利はもう目の前だ!!」
『うん!』
『サンキュー、ワタルサン!』
カイリューたちと二人は飛び去った。その姿もすぐに見えなくなり、彼女たちの無事を、立海も無事落ちるよう、祈った。
そんな時、黙ると言っていたはずの彼の声が聞こえてきた。
「へ〜、たまげたもんだなぁ・・・。あの二人ポケモンなんだ・・・」
ニヤニヤと笑う彼は面白そうにこちらを見ていた。
「・・・気になるのか」
「気にならないほうがおかしいでしょ?俺もあんなの初めて見たし。」
「安心しろ。もう見ることもない。お前はこのあと一生独房だろうからな」
「へーへー、そうでございますね」
それどもどこか楽しそうな彼にワタルは警戒心を強めた。
「(なんだ、この腑に落ちない感じ)」
モヤモヤする何かを胸の奥にしまい残党処理に行った。
・・・・・
立海学園
先程よりも人が少なくなった廊下を変わらぬペースで走る。減っているのは人数だけじゃない。彼らの体力だ。走っているからだけではなく、先程から休まずバトルしているということ。あまりダメージを追わなくても、その小さなダメージがどんどん貯まり今ではだいぶ減っている。傷薬も、急なことであったため持ち合わせがない。故に体力を回復することもできない状態だった。
ダイゴさんのもとへ集合しよう。もしくは、こちらへ向かっているテニス部の皆。すこしでも戦力が増えればこの厳しい状況を打破できる。けれどもその案は決していい考えではない。彼らの間に連絡手段はないからだ。アンコのライブキャスターもアポロにあった直後から消えた。盗られてことは明白。逆に利用されてなければいいと願うことしかできない。
「先輩、大丈夫っすか?」
「私は全然大丈夫。それよりも、ゴウカザルとピジョンの方が」
ちらりと二匹に目を向ける。ゴウカザルは一体のゴルバットを相手にしており、ピジョンはこちらにちらりと目配せしたあと[ピジョオオ!]と一声上げ、援護に入る。
[全く、問題ない]って。強がりもいいとこじゃないか。
思わず、ふっ、と笑ってしまう。
「大丈夫っていってんすかね?」
「そうだろうね、ふふっ」
「なんでわらってるんすか・・・?」
「ちょっとね」
首をかしげているうちにゴルバットは瀕死状態。さあ、先に行こう。
足を踏み出そうとした時だった。
ドオオオオオオオオンッ!!!
目の前が真っ白で何が何だかわからなかった
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