道草少女

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リザードンの背に乗りハナダの洞窟へと向かう。だが、私は何故ハナダの洞窟へ行くのか、なぜそこにサカキがいるのか、理解が追いついていない。だが、私を巻き込んだ彼、レッドさん。彼はそれが何故か理解した上で今、そこへすべてを終わらせるために向かっている。

「あの!どうしてハナダの洞窟に!?」

ビュンビュンと飛ぶ中、声が流されてしまわないよう必死に叫びながら聞く。
聞こえているのか、はたまた聞こえていないのか。何も反応が見えず、じっと答えを待った。

「ミュウツーってポケモンのこと、知ってる?」
「ミュウツー・・・」

カントウ地方で希に見られる伝説のポケモン。ミュウという幻のポケモンと関係してると聞いたことがある。
名前くらいなら・・・と答えると彼はすぐに答えてくれた。

「ミュウの遺伝子を組み替えられて作られたのがミュウツー。人造ってわけではないかもしれないけど、人の手が加えられてるのは確実。だから、きっとミュウツーを狙ってる」
「じゃあ、ハナダの洞窟にミュウツーが!?」

こくりと首を縦に振る。アポロの言っていた“やり方”というのはそのことだったんだ。それにしてもだ、なぜこんなにタイミングよく、私たちを出し抜くように遂行できたんだろうか。気づかないうちに情報が漏れていた?今のロケット団の財力、情報量、アポロなどのキレ者の頭脳があれば、気づいていてもおかしくなかったか・・・。
あと、何故彼は私をわざわざ連れ出したんだろうか。手持ちのポケモンが既に戦闘不能なことは知っているし、それ以外のポケモンたちがどこにいて、何をしているのかすら知らないだろうに。

「あの」

そのことを訪ねようとした時だった。目の前数百メートル先で爆発が見えた。それによる風圧も、音も少し遅れてやってくる。
一体何が起きている!?

辺りを見渡せば、下には街があり、空中では何かがものすごい速さで動いており、たびたび爆発や、レーザーのようなものが見える。
ポケモン同士が戦っている。

「あれ、ミュウツーと・・・グライオン?」
「サカキか!!」

下を見る。そこは整備された道が見えるが、街と思えるものは見えない。ぽつぽつと家は見えるが、草も茂っているところが多く、街と街の間だということが分かる。そして、人の影もあった。数人が固まっている。よく見ればその人たちは青色やオレンジ、緑などカラフルであることがわかる。そしてそれが私の仲間であるということも同時に。
レッドさんの肩をさっきよりもグッと掴み、そこへ下ろして欲しいと頼み込む。彼はすぐにリザードンに伝え、彼らのもとへ急降下し始める。

しばらく足を地に下ろしていなかったせいか、降りた瞬間変な感じがしたがそれでも、皆の元へ走り出した。向こうも、私がいることに途中から気づいていたようで、あちらの方がこちらに向かってかけてくるのが早かった。「アンコ!」「アンコチャン!!」「アンコ・・」私の名前を呼ぶ声がいたるところから上がり、私は彼らに、彼らは私に抱きついた。懐かしい匂いがした。画面越しではあるが、話は常にしていた気がする。それでも実際に会って、触れることがこんなにも嬉しくて、悲しいなんて思いもしなかった。

『おまえら、感動の再会もいいが今はこっちが優先だぞ!』

奥の方で霙が声を荒げる。足元には縄で繋がれたサカキと、ロケット団の団員が一人いた。下っ端と制服が違うことから、彼もまた幹部の一人だということが分かる。

「この人たちは、君のポケモン?」

後ろでこっちを見ていたレッドさんに聞かれる。表情はやはり変わっていなく、さほど驚いているようにも見えない。
こくりと頷き、未だに戦闘をしているミュウツーとグライオンを見上げる。

「ミュウツーは怒ってる。静かに暮らしていたのに、話を聞いてもらうにも興奮していてそれどころじゃないから、まずは倒して大人しくさせなきゃいけない」
「分かりました」

彼はリザードンを私は、流星を。グライオンはミュウツーの波動弾をモロにくらい、ヒューと空から落ちてくる。それが、私たちのバトル開始の合図になる。

「静、流星とリザードンの援護頼むね」
[うん]

目の前にミュウツーがゆっくりと下りてくる。

「リザードン火炎放射」
「流星龍の舞」

火炎放射を目にも止まらぬスピードで避け、距離を取るミュウツーにどんどん詰め寄っていくリザードン。その間に流星には龍の舞で力を最大限まで伸ばしてもらう。

興奮状態とは言え、こちらにも気を配る頭はあるようだ。シャドーボールを何発も打ってくる。一つ一つの威力が凄まじいのが、見ただけでわかる。

「静!サイコキネシス」

シャドーボールをサイコキネシスで粉砕するつもりだったが、やはり強い。取りこぼしが出てきた。だが、私の仲間はひとりじゃない。白夜が、蓮華が、火六がその取りこぼしをそれぞれ対応した。霙はふたりの見張りで来れないが、いつものように強い目で見守ってくれている。そのことがとても安心できて、しっかりと前を向いて戦える。

「流星、龍の息吹!」
「リザードン熱風」

広範囲の技をミュウツーは難なく避けながら、近くまで接近してくる。
そのまま波動弾を撃ってこようとしているとき、先に技を切り替えたのは私たちだった。

「超音波」

甲高い音が周囲を包む、ミュウツーも咄嗟にだが避けた。



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