道草少女
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「!?
その情報どうやって手に入れたんですか」
私は咄嗟に立ち上がり、ひとつのモンスターボールに手をかける。
そのモンスターボールは今にも出てきてしまいそうなぐらい激しく動く。
「やだなぁ、そんなに警戒しないでよ。教えてもらったんだシロナから。
このことを話してシロナに怪しいっていったら君のことを教えてもらって、
“この子なら適役よ、ポケモンと会話ができるしね”って。
なんならシロナに聞いてみればいい」
ダイゴさんは最初に会った時にように話し出す。
きっとこの調子じゃ嘘はついていないだろう。
私はモンスターボールから手を離し、大人しくさっきの石に腰を落とした。
「ていうことは、私の手持ちがヒトになれるの知ってるってことですよね?」
「ああ、だからそのヒトになれる力を使って三校同時に潜入調査できないかなって。
学校に入れるくらいの歳で君みたいな実力の持ち主はいないからね」
「・・・用件はわかりましたが、調べてどうなるんですか?
これ、カントー地方全域でもう“当たり前”のことなんですよね。
それを、変えることなんて私には到底できる気がしません・・・」
私は自分の足元を見て弱々しく答えた。
そんな私を見てダイゴさんはフッと笑った。
「そういえば、もうひとつ大事なことを話し忘れていたよ。
実はねその学校もしかしたらロケット団が関わってるかもしれないんだ」
「!」
ダイゴさんは私が食いついたのを確認して続けた。
「住民の情報によるとしょっちゅうロケット団が学園に出入りしてるのを目撃しているらしい。しかも人の目につかない時間帯を選んで
すごくおかしいと思わないかい?」
「じゃあ、これはただの潜入調査じゃないんですね」
「そういうこと。
それにワタルからの情報によると近年ロケット団が急に強くなったって言っていいてね。
学校制ができたのも4、5年前だ。
何か関係してるんじゃないかって僕たちは睨んでる。
ただ学校の内部がどうなってるか調べるんじゃなくて、ロケット団との関わりも調べて欲しいんだ。
それが今回アンコちゃんを呼んだ理由」
私は考えた。
私がここで断る理由もない。けれど潜入調査を承諾する理由もない。
わざわざ危険に突っ込む必要もないんだ。
あの時みたいに、またボロボロにされるかもしれない。
その時だった。
“ポン!!”
腰にあったひとつのモンスタボールから勝手に私の仲間が飛び出した。
そして目の前にいたのは、相棒のグレイシアだった。
「霙・・・」
「(・・・・)」
霙は何も言わずただまっすぐと私を見つめた。
でも、言いたいことはなんとなくわかった。なんたって生まれた時からの付き合いだ。
分からないほうがおかしいだろう
「うん、そうだね。
私たちあの時よりずっと強いもんね。ボロボロになるわけないか」
私はへへっと困ったように笑い霙の頭をなでた。
霙は自信ありげに笑い、撫でられたあと大人しくボールに戻っていった。
「どうやら、気持ちの整理はついたようだね」
「はい。
ダイゴさん、潜入調査の件受けます」
20130729
→あとがき