道草少女

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アコの試合中。テニス部は一箇所に固まり彼女に注目した。

彼女の無駄のないバトルに彼らは目を奪われ、それと共に戦いたいという興味が出た。

「彼女、話以上だね」
「ああ、丸井の話と噂からいくらか強さを推測してみたが予想以上だ」

あの気まぐれであまりこういったことに魅入らない仁王でさえじっと勝負を見ていた。

「たまらん戦略だ。
一度、戦ってみたいものだな。」
「そうだね、で、俺たちで一番最初に戦うのは・・・」

幸村の言葉に皆がある人物を見る。

その人物は丸井で、彼女以外眼中にないといった感じだ。みんなが丸井を見ているのに全く反応しなかった。
ジャッカルは気づかせようとするも、柳生に首を振られて手を引っ込めた。

「恋は盲目じゃの」
「まぁまぁ、いいじゃありませんか。こんなに幸せそうな顔をしてるんですよ?」
「そうだね、丸井がこんな顔してるのお菓子以外で初めてかもしれないな」

幸村がニコニコしているが真田は全くというふうにため息をつく。

「勝者、・・・」

審判をしていた先生の口からバトルが終わりということがわかる。
相手の男子生徒は頭を抱えて悔しそうに叫んでいる。たいして彼女はほっとしたような顔をしてチョンチーを胸の中に向かい入れた。

丸井の方から「チョンチーになりたい」なんて声も聞こえるが、みんな気のせいだと割り切って彼女を見つめる。

「次、お前だろ?ブン太」
「お、そうだった!!行ってくるぜぃ!」

皆は頑張れとは言わない。勝つことが当たり前で負けるなんて思っていないから。
それに負けるのも彼らの内で戦った時だけだ。

だが、彼女と当たった時は・・・?


観客席の下に見えた丸井は嬉しそうにアコに話したあと手を振って所定の位置まで跳ねるように歩いていく。

丸井のファンのあたりでざわざわとしているが、丸井のバトルが始まるとすぐに黄色い声の歓声に変わる。
ファンサービスを忘れない丸井はちゃっかり決めポーズをとって、相棒のブースターを出す。相手のポケモンはオオタチ。

その後3分もせずに勝負が決まる。

これでアコと丸井の勝負が確実となる。
対戦は午後からだろう。

誰もがこの対戦に期待した。


・・・・・・・・


アンコの学年のいる棟の保健室。
そこにひとりの少女が入ってくる。

「誉せんせっ!」
「おやおや、今は学年対抗バトルじゃないのですか?怪我しているようにも見えませんし」
「えへへ〜、誉先生に逢いたくてきちゃった!」
「困った子ですね」

女子生徒は嬉しそうに患者椅子に座り、誉は口元に笑みを浮かべ女子生徒と向かい合うように椅子の向きを変える。
それに期待した女子生徒は椅子をさらに詰めて上目遣いで誉を見上げる。

「で、どうして欲しいんですか?」

女子生徒の耳元で吐息のかかるように囁く。
その言葉を受け流せる女子は少ないだろうというくらいの色気で詰め寄られ、女子生徒は満更でもないように誉に抱きつく。
誉もそれに答えるように抱きしめ返し、首元に自分の顔をうずめる。

「せんせ・・・やぁ・・!」
「ねぇ、僕のお願い聞いてくれますか?」
「・・・うん・・・いいよぉ」

トロンとした瞳で返事をする女子生徒に誉はニヤリと笑い耳元で囁く。


「僕のお仕事・・・


手伝ってくれませんか?」



20140202
チョンチーに電気技が効かなかったのは、特性が”ちくでん”だからです
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