道草少女
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バトルに勝利したアンコはランターンを抱き抱え「よく頑張ったね、あと進化おめでとう!」と嬉しそうに語りかける。
次の試合がすぐ始まるため、そこから観覧席へ戻ろうとした時だった。
ライブキャスターのバイブが腕から伝わって来る。
こんな時間帯にかけてくるということは、よほどのことだろうと察したアンコは全速力でその場を後にしようとした。
だが、
「おーい!アコ―!」
後方で丸井が追いかけてくるのがわかった。
仲良くしてくれるのはすごく嬉しいことだが、今と状況を考えるととても迷惑な話だ。
アンコは一度立ち止まり、丸井のほうに向き話しかける。
「どうしたの、丸井くん」
「さっきのバトルのこと話したくてよ」
彼はニコニコと嬉しそうに笑っている。そんな彼の誘いを断るのはどこか心苦しいいが、早口で「今、すごくトイレに行きたいから、また後で!!」と彼の返事も聞かず去っていく。
丸井は
「あ、わりぃ・・・」
と、もう聞こえてないであろうアコの姿を見つめながらつぶやく。
・・・・・
やってきたのは人の気配がなかった体育館倉庫。
さっきのバトル場からはさほど遠くもなくすぐに駆け込めた。
慎重に周りを伺いながら“応答”のスイッチを押す。
『あ、やっと来た!!』
『すまない、いきなり呼び出したりして』
私以外のみんなはとっくに来ていたみたいで、最後が私たちだったようだ。
謝っていたのは霙できっと氷帝で何かがあったのだろう。
「大丈夫、それより何があったの!?今の時間にかけてくるってことは何か起きたんでしょ!?」
そう言うと霙と白夜は悔しそうな顔をしながら歯を食いしばっていた。
あまり顔に感情を出さないふたりがこんな顔をするのは珍しい。
よほどのことが起きたのだろうか。
『今日学年対抗戦でとんでもないものを見た』
「とんでもないもの・・・?」
『・・・・はっきりとは断定できないが、あれはきっとポケモンの制御装置か強化装置だと思う』
『!?』
「それは本当かい!?」
その言葉に誰もが衝撃を受ける。静は目を見開き震え始める。その横にいる火六は静かの背中を優しく撫で落ち着かせようとしている。私や、他のメンバーも静に大丈夫だよ。と声をかける。
だが私は知っている。静ほどではないが、私たちもその話を聞いて自分に余裕が無くなっていることを。
「霙、白夜!!その装置の形状は?あとどんなポケモンについてた、そのトレーナーは!?あと見たのは一つだけ!?」
「アンコちゃん落ち着いて。焦るのもわかるけど、一つずつちゃんと聞いていこう」
ダイゴさんに落ち着けと言われるくらいに、私の心は混乱していた。
ポケモンを制御する装置、もしくは強化する装置。それは私たちがシンオウで旅していた時の“あの事件”のトラウマの一つである。
私は深く深呼吸をし、霙と白夜に改めてひとつずつ質問をする。
「まず、装置の形状は?」
『リング状の装飾品だった。つけていたポケモンがギャラドスで尻尾の部分についていた。』
「で、そのギャラドスのトレーナーはどんな感じの人?」
『そいつ、四六時中オドオドしてる・・・やつだった。
だから・・・・あんな気の弱そうなやつに、ギャラドスが従うのは・・・難しいと思う。』
『けれどギャラドスはその頼りないトレーナーに従順だった。後からそいつを知っている奴らに話を聞いてきたんだが、予想通りギャラドスは支持を全く聞かないポケモンだったようだ』
なるほど。そのことでそういう装置を使っているって可能性が出てきたわけだ。
でもこれだけだとまだ確信にはならない。
「なんでそんなに確信を持ってそれがそういう装置だろうって言えるんだい?」
ダイゴさんが私の疑問をそのまま二人にぶつけた。
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