道草少女
□12
2ページ/3ページ
仁王side
観客席から下のバトルを見下ろす。今やっているのは参謀と柳生の勝負。今は柳生のグラエナが押しているが、きっと参謀のオーダイルが巻き返すだろうと思いながら。ボーっと見ている。
さっきバトルを見るのがめんどくさくなって外で自分の番まで散歩していたら、体育館倉庫に走っていくアコが見えた。
そいや、さっきの試合はブン太と彼女の試合だったけ。
結果は彼女の勝利なんだろう。あの強さからしてブン太がかなわないのは明白だった。
だが、なぜ体育館倉庫なんかに?
興味がむくむくと膨れ上がり、気が付けば倉庫の前まで来て、扉に聞き耳を立てていた。
ボソボソ
小さな声で何かをしゃべっているらしい。ほかに誰かいるのか?
さらに息を殺し、その声を拾うだけに集中する。
「霙・・夜!!その装置の形・・・?あとどんなポケモ・・・た、そのトレーナーは!?・・・たのは一つだけ!?」
「ア・・・・落ち・・・。・・・・わ・・・けど、一・・・ゃんと聞いて・・・」
彼女の声が急に大きくなった。そのあとに男の声がぼそぼそと聞こえる。
みぞれ?装置?ポケモンにトレーナー、そして一つ?
なんのことだ?
みぞれとはきっと名前だ。それに装置って。
ボソボソ
ボソボソ
さっきよりも声が小さくなり、また会話が聞こえなくなった。
しかし、いったい誰と何を話している。それに口調も変わっている。彼女はなんだ?何を隠している?
何をしようとしている?
「!?
誰!!」
その声に体が固まる。もしや気づかれた?
だが、聞き耳を続けていると、彼女の他にもう一人、女の声が聞こえた。
いったい誰だ。どこからこの中に入ったというのだろう。
「だ・・・の学園から仲・・・・れる・・・・・けれど、で・・・・・・ると誰・・・全かな・・・のは難しい・・・・ね・・・」
『・・・・・・』
『あら、そん・・・いじゃない。あの赤・・・・とかブン太っ・・・、それ・・・ッカルとか・・・・は思・・・わよ?』
会話の内容はよくわからないが確実にブン太の名前がでた。それに赤、ッカル。ブン太から連想すると赤也とジャッカルしかいない。
そこでなんで三人の名前が出てくる?
また中で会話が始まる。
これまでで出た単語で考えるとしたら。
みぞれ、装置、ポケモンにトレーナー、一つ、ブン太に赤也、ジャッカル。
みぞれは話している相手の男。
装置と一つはきっとセットだ。装置が一つ。
ポケモンにトレーナーそのトレーナーの中にブン太赤也、ジャッカルのことが入っていたら・・・。
そして“学園”“難しい”
彼女がこの学園でなにかしようとしていることは確実みたいだ。
いや、まてよ・・・。
装置。そして男・・・。男がもし阿部誉のことだとしたら?
あの噂は本当ということになる。けれどもなぜこんなところで話す?保健室で話せばいいことだし、いきなり出てきた女はどうなる。
そして、扉があいた。
・・・・・
そこで彼女から聞いたこと。
シンオウにはここのような学園がないということ。
そのことに驚きを隠せなかった。
シンオウが発展していないわけではない。ならこの学園があってもおかしくはないなのに何故。
この学園は“当たり前”のことではないのか?
じゃあ彼女はなぜポケモンをあんなに上手く動かせる。
それに、阿部誉も知らないと言っていた。あったことすらないと。
猫かぶってたのは認めたが、おかげで彼女のことがますますわからなくなった。
ああもう、わけがわからん
仁王side終