道草少女

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私自身どうやって顔を合わせればいいのかわからない。赤也もいくつもの衝撃の事実に頭がついていかないらしい。

だが、そのために赤也にこのことを話したわけじゃない。
ここからが問題なのだ。
はたして赤也は私に協力してくれるのだろうか。このことを信じてそれでも私についてきてくれるのだろうか。

そのことが怖くて怖くて、なかなか最後の“私に協力してくれないか?”という言葉を口に出せない。
沈黙が過ぎていく。

“ザバアァァ”

湖の方から何かが出てくる音がした。驚いて二人でそちらを向くと、人型に変身した蘭がこちらに近づいてきた。

「え、ちょっと!!あれ誰っすか!?いま湖から!!」
「蘭!!なんで『あんたねぇ!!早くいっちゃいなさいよ!』いだああ!」

いきなり現れたと思ったら、私の方に肩をいからせながら歩いてきて頭を叩かれた。
結構本気だったのかかなり痛い。
いやそんなことよりも、何故その状態で出てきたんだ。

「蘭!なんで出てきたの!」
『切原赤也』
「は、はい!」

見事に私の話をスルーし、赤也に話しかけている。赤也も赤也でビクビクしながらも、蘭に集中し、その話を聞いていた。

『さっきのアンコの話、聞いたでしょ?ロケット団が関わってるってことはよからぬことが起こるってこと。
それを未然に防ぎたいから今こうして調べている。そこまでは理解したわね?』

コクコクと首を縦に振り肯定を表す。

『で、アンコがどうしてあんたにそれを話したかというと・・・』

ここで蘭は目線を私に移す。こればかりは私自身の口で言えということだろう。
赤也も蘭が私に言うように目で訴えているのを理解し、私の方に向き直った。

いけ、私。いける、いえる、私ならできる!

「赤也に協力して欲しいの。その調査の」


「俺に・・・?」
「うん。私としは協力してくれる人が欲しかったの。それで、赤也には本性もバレてたし、何より嘘をついてるようには見えなかったから、
一応聞くけど、赤也はロケット団と関係しているわけないよね・・・?」
「そんなわけないじゃないっすか。
てゆうか先輩、本性って・・・学校でもこんな感じじゃないんすか」
「ああ・・・・いや実はこの学園で生活するにあたって設定を決めていてね、それが病み上がりのおとなしい女の子っていう・・・」

そういうと赤也は思いっきり吹き出した。必死に笑いをこらえながら「お、おとなしい」
といいながらヒーヒー言っている。
そんなに面白いことなのだろうか。なんだか馬鹿にされているようでイラッとする。

「ま、まぁいいんじゃないんすか・・・?

で、先輩に協力はもちろんしますよ!!」
「本当に!?」
「うっす」

嬉しすぎてどうすればいいのかわからなくて、思わず蘭を見る。
蘭は優しく微笑み返してくれる。きっと良かったわねと言いたいんだろう。私も蘭にありがとうと、やったよ、という意味を込めて微笑む。

赤也に向き直り、色々と話す。

「ありがとう赤也。危険なことだとはわかっていると思うけどできる限りフォローする。
それに私より危険なことはさせないから安心して!」
「はい!俺頑張りますね!

あと・・・・その・・・・」

赤也はチラッチラと蘭を見ながら何かを言いたそうにしている。
当たり前だ。気にならない訳無いだろう。いきなり湖から出てきた露出度の高い女が話しかけていて、今もいるということは。
なんて説明するべきだろうか。
正直に話すべきか、誤魔化すべきか。正直に話すとなると、私がポケモンと話せることも話さなくてはならない。でもその情報は極力教えたくない。このことがもしもほかにも聞かれていた場合がめんどくさいからだ。

どうしよう。

『赤也くん、あたしはアンコにその調査を頼んだ上司よ』
「「え!」」

返答に困っていると、蘭がいきなり自分で答え始めた。
そんな嘘で果たして通用するのだろうか。いささか無理がある気がするが、私はそのまま蘭の嘘を聴き続けた。

『今日はちょっとした情報を話に来たのと、この子の顔を見たくなったのよ』
「はぁ・・・」
『アンコがうじうじしていてイラっとしたから出てきちゃったのよ。ごめんなさいね。
あと、この子無茶ばかりしたりあまり周りを頼ろうとしないから、よろしくね赤也くん」
「は、はい」

じゃあ、といって蘭はまた湖の中に入っていった。
あれで誤魔化せただろうか。そっと赤也に目線を向けると、キラキラした瞳で湖を見ていた。

「あの・・・」
「先輩!!かっこいいですね先輩の上司!」
「あ、うん・・・」

やはり赤也は純粋で正直者のようだ。うまく誤魔化すことができてとてもホッとした。
とりあえず、暫くはこれでどうにかなるだろう。



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