道草少女

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一瞬だけ彼の顔が冷たくなる。けれどすぐにさっきのような微笑みに変わり、はははと笑う。

「あまりいい噂ではないだろう。困ったものだよ。


ねぇ、アコさん・・・アコさんはここに来る前どこにいたんだい?」

「私ですか・・・?私は、私は・・・?病院に、いや・・・私は本当は


“ガラッ”


突如保健室のドアが勢いよく開く。
そこに立っていたのは仁王だった。何やら怖い顔をしてこちらを見ていた。

「おや、どうしたんですか仁王くん」

仁王は先生の言葉を無視しこちらにずんずんと近づいてくる。そして私の腕を掴みドアへ歩き始めた。

「いっつ!!」
「!
すまん。・・・足、ひねっとったんか?」

私はボーっとする頭でこくんと頷く。仁王は私を背におぶさりそのまま保健室を出る。
だが、ドアを出たところで「あ」と立ち止まり、先生の方へ顔を向ける。

「誉せんせ、生徒に薬を盛るんはどうかと思うぜよ、先生としても、人としても・・・」

ここで私の意識は途絶えた。


・・・・・・


目が覚めて目に入ったのは寮の私の部屋だった。
なんだか体が重いと重い足へ目を向けると、人型になった蘭が寝ていた。
私の介抱をしてくれたのだろうか。

今度は時計に目をやる。時間はいつも起きる時間よりも少し遅い時間だった。
遅刻はしないだろう。

とりあえず、まずは蘭を起こして昨日のことを詳しく聞こう。

「蘭。蘭、おきて。

蘭」
『アンコ・・・?

アンコっ!!』
「うわ」

蘭は眠たそうな顔をして私を見ていたが、次第に頭がはっきりしてきたのか名前を繰り返し、抱きしめ、私の存在を確認していた。
私もそんな蘭に答えるように強く抱きしめ返した。
何が起こったかはまだわからない。そんな状況だからこそか、無性にみんなに会いたくなった。


・・・・・


「昨日は・・・どうもありがとう・・・
で、昨日何が起きたか、いろいろ説明してくれない?」
「ぴよ・・・」

昨日のことを蘭に詳しく聞いた。けれども聞いてみるとそれは昨日のことを理解するには十分な情報ではなかった。
昨日そのまま仁王は寮へ私を送り、寮母さんにあずけてくれたとか。
その間は一切口を開いてないという。

私が理解したいのはそういうことではない。
何故仁王があの場所へ来て、そしてそのまま私を連れ出したか。あと、あまり覚えていないが、阿部誉に“薬を盛るのはなんとか”と話していた気がする。

それがいったいどういう意味なのかということを知りたいのだ。

蘭自身はそのことをわからないと答えた。
だから今日の昼休み。仁王本人を人気のない場所へ呼び出した。

目の前にいる仁王はめんどくさそうにボリボリと頭をかいていた。だがその動きがいきなり止まり私の方をジッと見つめ始めた。
いきなりのことに驚くことをごまかすことはできなく「な、なに・・・」とひるんでしまう。

そして彼はいつものいやーな顔をしてニヤニヤ笑い始めた。
私の額にいやーな汗が伝った。
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