道草少女

□15
3ページ/4ページ


仁王はゆっくりとこちらに近づいてくる。
私はそれに合わせるようにゆっくりと後ろに下がる。

傍から見たら見つめ合っているように見えるかも知れない。だがこの間に流れる空気は全くもって甘い感じのものではない。
いじめっこに詰め寄られている感じだ。

が、ゆっくりとした追いかけっこ(?)も終わっってしまった。
私の後ろには壁がありもう、後ずさることができない。それに対し仁王は、互の顔に息がかかるくらいの距離まで詰め寄ってくる。

あまりの近さに顔に熱が集まる。きっと赤くなっているに違いない。いや、男でも女でもこんなに顔が近ければ顔が赤くならないわけがない。

「ち、近い!!」
「ん?」

反射的に距離を離そうと押し返そうとするも腕を掴まれて壁に押し付けられる。
男女の差というものは思っていたよりもあるもので、抵抗などできなかった。

「まぁ、落ち着きんしゃい」
「こんな状況で落ち着いてられるわけないでしょーが!」

そう、落ち着けるわけがない。よくわからない危機感だってある。
仁王に関しては相変わらずニヤニヤしている。何がそんなに楽しいのかがわからない。
この状況なんとかしたら絶対一発は殴る。

「とりあえず、説明じゃったかの。
それよりも、お前さんこれで俺に借りが出来たわけじゃが・・・。

それがどういうことか・・・わかるじゃろ?」

さっきのニヤニヤした笑いとは違い、爽やかな笑顔を向けてくる。
それがより嫌味ったらしくてイライラする。

それにこの歪みのなさ。きっとこの前聞けなかった“私のこと”をこの借りで言えということなんだろう。

確かにこの男はもうあまり疑ってはいない。むしろ仲間でいてくれたら頼もしい。
けれども、なぜかプライドがそれをあまり望まないのだ。
よくわからないが負けた気がする。何とも勝負なんてしていないのに。

「・・・・いいよ。話してあげる。だから昨日のことをいろいろ質問させて」
「プピーナ」

合意ということでいいのだろうか。時々変な言葉を使っているが口癖なのか?

「で、早く手を離して離れて欲しいんだけど・・・」
「ん?」
「いやだから「ほれ、口はあいとるんじゃ、はよ話んしゃい」・・・・」

そういって更に顔を近づけてくるあたり絶対狙ってやっているんだろう。
掴んでいる腕を振り払おうとしてもびくともしない。

「はよ話さんと本当に口塞ぐぜよ」
「なっ!」

奴の息が顔にかかる。口を塞ぐって、顔の距離からして口を口で塞ぐということじゃ・・・
そう思うと頭がパニック状態になり、さらに顔が赤くなる。

「は、話すから!もうちょっと顔を離しなさいよ!!」
「なんでじゃ、誰かに聞かれるかもしれん」

といって仁王はニヤニヤと笑い始める。絶対楽しんでいる。ほんとに趣味の悪い奴だ。
こういう時にあの過保護な四人に助けを求めたくなる。
とりあえずこの状況を早く終わらせたいため、仁王に私のことを話した。
前に赤也に話したように包み隠さず。目を合わせるのは少しためらったものの、話すうちに距離も忘れていた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ