道草少女

□16
2ページ/3ページ


ポケモン回復装置で蘭を回復している間は暇だ。
やることはこれといって何もない。まぁ、全快するまでそんなに時間はかからないのだが。

そんな時後ろからあの嫌な声で声をかけられる。

「おつかれさん」
「仁王・・・」

手をひらひらと振りながら、私の座っているソファの隣にどかりと腰を下ろす。
いくらソファのスペースがあるからといってそんなに幅を使わなくてもいいだろうと思いながら、なんのようかときく。

「お前さんさっきの試合わざと負けたじゃろ」
「え、なんでそんなに皆わかるの・・・」
「あれでわからんと思ってる方がおかしいなり」

といってデコにデコピンを喰らう。地味に痛い。

「で、なんで手ェなんか抜いたんじゃ」
「・・・後で話す。それにあんたのこともう一人の仲間にも言わなきゃいけないしね」

「仲間?」と仁王は意外そうに顔を驚かせる。
まぁ確かに仲間なんてこの状況で普通はいるわけないだろう。私だってできると思ってなかったくらいだ。

「あ、あんたさ、人が来ないような場所知らない?そこで色々と話をしようと思うんだけど」
「まぁ知らんことはないがのぉ。
仲間って俺も知っとるんか?」
「ああ、うん。赤也」
「は!?」

これにはさすがの仁王も驚いたようで、ソファにあずけていた背中をガバリと起こし私の方に顔を向ける。
“ピ――”
丁度よく、ポケモン回復装置完了の音が鳴る。驚く仁王に目も呉れずに私は装置から蘭の入ったモンスターボールを取り出し腰のベルトに付ける。

「じゃ、次の試合行くから。」
「ちょ、まちんしゃい!」
「あ、そうだ。さっきのなんで手を抜いたかってやつ、次の試合見てたらわかるかも」
「はぁ?」
「部活終わってからでいいから人来ない場所に案内してね。赤也も連れて」
「・・・・ピヨ」


仁王が最後どんな表情をしていたかはわからないが、まぁ了承してくれているだろう。


私の本当のバトルはこれからなんだ。


そう意気込み、会場へ向かう。


・・・・


会場に着くとすでに小杉がバトルフィールドの中に入っているのが見えた。
私も小走りで指定の位置につき、目の前の彼女を観察する。

小杉はニコニコしながら「よろしくねー」なんて手を振ってくる。
手を振り返すなんてキャラではないし、気もない。軽く会釈だけして審判の開始の合図を待つ。

ふと観客席の方を見るとテニス部の連中が固まっているところがあった。
ほとんどのものが真剣な目をしてこの試合を見ている。丸井に関しては一人だけ浮いている感じでニコニコと笑っていた。丸井らしい。

しばらくしてそこに仁王も加わった。メガネをかけた、たしか柳生とかいう人の隣に座り、彼と一言二言話して顔をこちらに向けた。

「それでは三位決定戦を始めます」
「よろしくお願いします!!」

元気な小杉の挨拶に対し、私はしっかりとキャラを守り挨拶する。
言葉ははっさないものの、慌てた感じで深くお辞儀をする。うむ、我ながら完璧だ。


そして審判の「始め」という声が聞こえた。



さあ、はじめよう。



フィールドはあいも変わらず、真ん中に円形のフィールドがあり、その周りを底の深い水で囲う感じになっている。

出されたサーナイトに思わず眉をしかめてしまう。
蘭もきっと同じ気持ちだろう。胸糞悪い。さっさとこの試合を終わらせてサーナイトを助けてあげたい。その気持ちがむくむくと膨らんだ。

「ランターン水の波動!」

水の波動は攻撃範囲が広い。それを逃げられないよう連発して攻撃する。
だが、相手もこんなもんでやられるわけがなかった。

「サーナイト、サイコキネシス!!」

水の波動はサイコキネシスで止まりその場で弾け飛ぶ。だが、まだまだ甘い。
そこに畳み掛けるように私はランターンに指示を出す。

「ランターン、ワイルドボルト!」

ランターンの周りを電気が包みこむ。そのままランターンは目にも止まらぬ速さでサーナイトに直撃する。そのまま水中に戻り技に当たらないよう常に泳ぐ。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ