道草少女
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私の手には二つの美味しい水がある。
それをもち先ほどバトルに負けた赤也のもとへと向かった。
今頃は炎月を回復しに行っているだろうから、確実にさっきの場所にいるだろう。
正直に言うと赤也は馬鹿だと思う。
だが、素質はある。
今の真田弦一郎とのバトルは私の予想していた結末とは全く違ったのだ。
それはもちろんいい方に。
まだ戦い方も粗削りだし、焦ると的確な考え、指示ができていないのは明白だ。炎月だってまだ最終形態ではないから、まだまだのびる。
けれどもだ、私の出した課題は少しずつだができるようになってきていた。
答えがわかったのだろうか?それかまぐれか。
いずれにしろ、赤也はもっともっと強くなれる。その根拠のない予想だけは何故か確信が持てた。
ドアを開けると誰かと入れ違いになった
その視界に入ったのは、さっき赤也の相手だった真田弦一郎だった。
彼は私に気づいてないようで、すっと行ってしまった。
その一瞬で見た彼の顔はどこか安心したような感じだった。
不思議に思いながら中にはいると、そこには既に回復が終わった炎月と、ソファでうなだれる赤也だった。
さっきのバトルがよほど悔しかったのだろうか。
少々不安になるが二人から少し離れた場所に座り、トーナメントの小さい表を開く。その際美味しい水を彼らの前においとく
彼は一度こちらを見るも、慌ててまた顔を伏せてしまった。
そしてズビッと大きく鼻のすするおとが聞こえた。
え、悔しさお通り越して泣いているのか!?
ともかくあと少ししたら一言いって会場に戻ろう。私たちはここではまだ話てすらいない設定だから、気軽に喋りかけることができないのがむず痒い。
チラッと赤也の方を盗み見る。
何やら一生懸命顔をごしごし擦っているようだ。ああ、あんなことしたら顔は綺麗になるかもしんないけど痛くなってしまうだろうに。
「あ、あの!」
いきなり大きな声で話しかけてきた。
その大きさは流石にヤバイと思い口の真ん中に人差し指をたてる。
あ、やべ。と小さく呟き、彼は再度話始める。
「さっきの試合結果的には負けちまったんですけど、でも、前に副部長とやったときよりすげー手応え感じて。
でも俺、まだあの問題の答えがわかんないっすよ。
だから、あの試合。答えが分かってたらもしかしたら副部長に勝てたんじゃ……って思うんす。」
あ、全部独り言っすと、からっと笑う。
そうか、赤也は無意識のうちに答えを分かっているんじゃないか。
だが、無意識だからそれがなにかわからない。
「これも全部独り言だけど、」
そういい回りに人がいないか確認する。
「あのバトルで答えは出ていた。
君は無意識のうちに答えを見つけたいるみたいだよ。」
トーナメント表を折り畳みポケットの中に突っ込む。
「だから、さっきのバトルよく考えてみて。」
そのまま部屋を立ち去った。
もう答えは目の前だ。大丈夫。
赤也、君を信じているよ。
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