道草少女

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トーナメントの方は順調に勝ち進んでいた私だったが、他の戦況も見ているうちにあることに気がついた。

「(これ、このまま次も勝てば、真田弦一郎かまた幸村精市と戦うことになる。)」

そう、幸村精市と真田弦一郎も同じように順当に勝ち進んでいたのだ。
そして二人は私と戦う前に決着をつけるのだ。

相性からいって幸村は不利だろうが……


チラリと遠くのほうを見る。同じクラスの者と思われる男子生徒二人となにかを話している幸村精市。
その顔は以前見たときよりも随分オーラのある顔つきだ。

やはり私が手抜きをしたせいであんなにもチクチクとした感じが出ているんだろうか。いや、確実にそうだろう。現にあの試合のあとかなり怒っていたし。
きっと自分でいくらか抑えているんだろうが、爆発したら野生のポケモンも見ただけで逃げてしまう。


あの状態ならいくら草と炎でも幸村精市が勝ちそうな気がする。
それほどの気迫がひしひしと伝わってくる。


正直、真田弦一郎とも、幸村精市ともバトルをするのが恐いというのが本音だ。
素直に勝てる気がしない。
そしてそれが少し楽しみだったりもする。


「おーい!アコ!」


ブン太の声が何処からか聞こえた。キョロキョロと辺りを見渡すも、これといった姿が見えない。
はて、気のせいか?と思っていたら更に「上上!」と声がした。

そういえば今私のいるすぐ上はちょうど観客席のはじっこだったなと思いながら見ると、ブン太と真理ちゃん、明日香ちゃんがいた。ブン太は何時も通りの笑顔でいるが、後ろの二人はニヤニヤしながらこちらをうかがっている。


「ブン太くん、真理ちゃん明日香ちゃん」
「応援にきたぜ!さっきの試合もすごかったな!一撃なんて、鳥肌もんだったぜぃ」
「あはは、ありがとう!
次も頑張るよ」
「おう、アコならぜってー勝てるよぃ」


あまりにも真剣に応援してくれるもんだから、照れ臭くなってしまい顔を下に向けてしまう。

チャンピオンになったとき、確かに応援してくれるひとが増えたり、ファンが少しできたりなんかはしたが、こんなに熱心に応援してくれるひとは初めてみたかもしれない。
もう一度言う。照れる。

じゃあ俺あっちに戻るわといって、テニス部のもとに戻ったブン太。
その後ろ姿を、相変わらずニヤニヤしながら見ていた二人がこちらにきた。


「見せつけてくれるねぇ」
「いつのまにあんなに仲良くなったのよ!」

等と茶化して来るもんだから、必死に弁解して選手控え室に戻った。
それでも、後ろから「頑張れ」「応援してるからね!」という声が何よりも嬉しかった。



――――――


時間が進むのははやく、私は準決勝まで勝ち進み、残りの試合はあとひとつになった。

そして予想通り、次の幸村精市と真田弦一郎の試合で決勝の相手が決まる。
いくつも試合があったが、生徒たちのボルテージは下がることなく、むしろどんどん上がっていって最高潮に達しようとしていた。


そして始まった二人の試合。
両者一歩引かずにバトルが進む。

やはり幸村精市は草タイプで不利な状況でも真田弦一郎を押している。
バクフーンも辛そうだ。

ダイゴさんのようすも見ると、楽しそうに見ている。
二人はそれなりに認められているんだろう。

そして、審判の声が響いた。

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