道草少女

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「で、話していた隠し扉のある廊下とはここのことかい、アンコちゃん?」
「はい。いや・・・あn「ふむ、何もないように見えるがなにかのスイッチを作動させればいいと」
「はい、だかr「ふふ、なんだか珍しい石を求めて洞窟の中をさまよっているようだよ!」
「あの、話聞いてください・・・」


幸村精市のバトルに見事に負けた私は、ポケモンを回復させていた。途中で真里ちゃんと明日香ちゃんにあったが、一人になりたい気分で会場に行っていてもらった。
久々に負けた気がする。まぁ、できることなら前に当たった時に本気で勝負したかったのだがその時だったら私が勝っていたんだろうと思う。
彼のあそこまでの気迫と原動力は明らかにあの試合の反動によるものだったから。
悔しい気持ちもあるが、やはりあの試合は楽しかったという気持ちの方が強い。あんなにワクワクしてドキドキした試合はポケモンリーグ以来だろうから。

ポーン。ポケモンの回復が終わったとランプが灯り、ボールをいつもの腰のベルトに戻そうとした時だった。
大きな音を立てドアがあき、入ってきた人物に抱え走り去られた。
「は?」と言葉もでなく。相手の顔を確認した。

「ちょ!あんた!!」
「ピヨ、説明でも説教でも後でいくらでもきくけん、ちょっと黙っときんしゃい!!できればしがみついてくれると楽、なり!」

切羽詰った顔で言われ、仕方なく腕を首に回し黙って身を任せた。
なんだこの体勢は。まるでコアラの赤ちゃんじゃないか。そういえば、前もこうやって仁王に抱えられた気がする。保健室の時だっただろうか。あの時は阿部誉に薬をもられていたから、未だにちゃんとした記憶がない。話だけは聞いているがどうも実感がわかないのだ。まるで夢物語を聞かされていたかのようだった。

仁王はどこかの扉に入り、私に「ついた」といい下ろした。
辺りを見回すとそこには見慣れないものが連なっている。その正体がわかった時には顔に熱が集まり、仁王に思いっきり掴みかかってしまった。

「あああ、あんたここ!!」
「しー!!」

仁王に口を塞がれ、動きも封じられる。ほんとにすまんとは言っているもののなぜ男子トイレなんかにわざわざ連れてきたのだ!怒らないわけがないだろう。もし万が一こんなところを誰かに見られでもしたら・・・!

「はは、アンコちゃんって意外と初なんだね」

後ろから声がして、振り返るとそこにはダイゴさんがにこやかにたっていた。しかも服装が変わっている。ここの学園の制服を着こなしていた。

「なんでここに、しかもその服・・・」
「僕もまだまだ学生っぽく見えるだろう?」
「はい、っていやいやいや、なんなんですかこれ!!」

私一人だけ状況が飲み込めずにいた。仁王は何かを知っているようだし、ダイゴさんは何も知らない私を見てのんきに笑っている。

「まぁ、歩きながら状況説明はするから案内してくれないかな?例の忍び込もうとしている廊下のゴミ箱へ」

その目はさっきと一変して真剣なチャンピオンの目だった。


・・・・・


なんでもダイゴさんはここに来る前に極秘で生徒や先生の情報を入手し、下調べをしたそうだ。
そして目をつけたのが仁王だった。なんでも仁王の変装が役に立つということで、休憩時間に案内と称して二人で会話できる人の少ない男子トイレまで案内させ、協力要請をした。もともと仁王は私の仲間として協力をしていてくれていたから、すぐに了承したらしい。
ダイゴさんの作戦はこうだ。仁王に自分になりきってもらい、優勝者となるべく時間をかけて戦ってもらう。今は会場が一番盛り上がっていて、どの校舎にも人はあまりいない。
その間に私と隠し通路へ潜入し、あわよくばロケット団を潰すとか。そう思い今日連れてきたメンバーはどの子達も優秀なんだ。とダイゴさんはモンスターボールをなでていた。その言葉の裏が怖くてしばらく目を合わせられなかった。
それに仁王のメタモンは仁王の姿限定で変身できるというので、戻っていっても怪しまれることはない。
今が絶好のチャンスだということに変わりはなかった。

そして今の状態になる。

ダイゴさんがさっきからはしゃいでいて、正直鬱陶しい。
遊びじゃないとかさっきは真剣な顔して言っていたのに、説得力にかけるものだ。

「ねぇ」

目線を向けるとゴミ箱はよけられ、小さな空間の壁だけがそこにはあった。

「まさかその壁が入口ですか」
「いや、何もない」

そーですかと声には出さずにそのまま飲み込む。さっき言っていたスイッチがないからどこも動かないんだろうけど、コンコンと叩く壁は一般的に聴こえてくる音しかしない。隠し通路か何かあるならそこは空洞になっていて、響いた音が聞こえてくるはずだから。



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