道草少女

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あれは二年前の、ちょうど夏の終わり頃だった。シンオウ地方のポケモンリーグで優勝するためアンコ達は故郷のキッサキの洞窟にこもってしゅぎょうをしていた。その頃の仲間は、霙に蓮華、火六、白夜、流星。その時はまだ五匹しかいなかった。まだ静は仲間の一人としてはおらず、アンコ自身六匹目の仲間を誰にするか、そもそも六匹目を向かい入れるか、そのことすら考えてはいなかったのだ。

今日も今日とて、手当たり次第にポケモン勝負でレベルを上げてはノートに記入をし、改善点、戦略を考えたりと忙しい日々を送っていた。毎日朝早くから夜遅くまで、食事、バトル、寝るということがほとんどでかれこれ一週間が経とうとしていた。それでもその行動が終わる様子はない。
そんな中今は昼食の最中で、ポケモンたちは専用のフーズを食べている。しかし霙だけは人型になりアンコの食事を甲斐甲斐しく作っていた。この昼食自体提案したのは霙だ。この修行が始まってからはよくあることで、食事、睡眠の意識がかなり低くなっている彼女に対して、色々と世話を焼いていた。それはもちろん霙だけではない。あのアンコに対して砂糖に練乳をかけたくらい甘い火六や、感情を表に出さない白夜さえもが怒ったこともある。もちろん今回の修行でではないが、今まで何度もこういうことがある。
ノートとにらめっこをしている問題児の元へ出来た料理を運び、となりに腰を下ろす。

『で、今度は何で悩んでいるんだ。とりあえず食え。』

「ん〜」と曖昧な返事で皿を受け取る。その様子を見ているだけでハラハラするが、それも毎度のことだ。今更そんなことでは心配をしなくなった。
ノートは彼女の膝の上に開かれたまま置かれ、霙もそれを覗き込む。
そこには昼食前最後のバトル、ハガネールと白夜の試合のことが書かれていた。
だが、チラチラと手を前のページに手をかけている。前のページも気になるのだろう。もぐもぐと動かしていた口を鎮め、ノートに目を向けたまま喋り始める。

「いや、実はさ・・・色々記録見てたらウチのメンツって攻撃的な人たちばっかじゃん。
耐久ないなぁと思って」
『ああ、確かに。
けど、それに関してはレベルを上げてもどうにもなんないだろう』
「そうなんだよねぇ。いくら攻撃的で一瞬でかたをつけようとしても頑丈持ちじゃあね。それに砂嵐とかついてたら最悪だよね。
やっぱりもう一人入れるとしたら耐久系の子かなぁ・・・」
『えー!!なになに!?仲間増やすの!!』
「うぐっ」

霙と反対側の半身に衝撃を食らった。声からして流星だろう。それなら女の子がいいーなんて言っている。あとでお返ししよう。なんて考えると同じ衝撃をもう一度食らった。今度は蓮華で、流星ごと私に突っ込んできた。

『私も女の子がいい!!』
『そうそう!!やっぱりこのメンツむさくるしいしさ、女の子女の子!!』
『そういう話じゃねぇ!』
『『きゃー!』』

この二人が絡んで霙が怒鳴っていないとこなど見たことはない。
ひとつため息を吐いて辺りを見回す。ここもそろそろポケモンが少なくなってきてしまった。そろそろ場所を移動したほうがいいだろう。そう思いながら残りの料理を大きな口で掻き込みひたすらモグモグするのだ。

・・・・・


昼食がすんでから更に奥の方へ進んでいく。やはりキッサキの洞窟は涼しくていい。各地を巡ってジムリーダーに挑戦した時にも色々な洞窟にこもったがクロガネやフタバあたりはかなり暑かった。夏や春だったのも原因だと思うが、元々寒いとこ生まれの私には環境的なものが一番効いた。
奥に進むにつれて暗くもなるので、火六に協力してもらいあたりを明るくし進む。

『アンコ大丈夫ですか?もうちょっと明るくもできますよ』
「大丈夫、いつもありがとうね」
『い、いえ!!お礼なんて!!こんなことお茶の子さいさいです。いつでもどんな時でもこの火六、アンコのため』
「うんうん、ありがとありがと」

この状態(通称めんどくさいモード)に入ると大抵一人で語り始めるので適当に受け流している。だが、今日はその一人がたりも一瞬で終わってしまった。いや、止まった。言葉だけでなく歩みまでも止まり、流石におかしいと気づく。

「どうしたの」
『何かいます。気をつけてください』

周りに耳を傾ける。物音一つせずポケモンたちの声すら聞こえてこない。
ジリジリと先へ進んでは同じことを繰り返していると、ほんとに微かだが誰かの息遣いと、痛みに呻く声が聞こえてきた。
火六にそのことを伝え、気配を察しその者の元へ案内してもらった。

案外その者はすぐ近くにおり、その正体は小さなメタングだった。
これが静とアンコたちの初めての出会いである。



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