道草少女

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目を開けて初めに目に入る光景よりも、その耳に嫌に耳障りな声が入ってきた。

「あひゃ、あひゃひゃは、やっと帰ってきた!それに新鮮なポケモンも五匹。ひゃひゃひゃああ!完璧だこれでまた暫くの間は新しいポケモンは必要なくなるなぁ。めんどくさいんだよなぁ。わざわざ捕まえに行くのは。でも自分でやらないとアホみたいなポケモンばっかり連れてきてちいっとも研究が進まない。こればっかりは仕方ないなぁあ」

目をこじ開け、状態をガバッと起こす。目に広がるのはまさに絶望。目の前の実験台にはメタングが繋がれており、ぐったりしている。そしてその机に向かう小柄で汚らしい男。髪も顔も体も気にしないたちなのだろう。ボサボサで汚れもひと目でわかる。一般人はしていないような痙攣しているような動きをしており、奇妙さが際立つ。さらにその周りには円柱状のカプセルがいくつもあり、その中には全てポケモンが眠っていた。勿論私の仲間も。血の気が引く。冷静でいられない。今すぐ助けなきゃ!!けれども体が拘束されており。歩くことすらできない。

「おんやああ?おきましたね!あひゃひゃは。ありがとうございますよおお嬢さん!おかげであたしの研究が進歩しそうですからね、あひゃひゃああ。心配しないでくださいね。あなた様のポケモンたちは綺麗につかってあげますからああひゃひゃああ!!」
「ふざけるな!!お前だな、この子を狙っていたのは、一体どうしてこの子に執着するの!?」
「おんやあ、威勢がいいですねぇ、しかもあたしに興味を持ってくれるとはあ、嬉しい限りですぎゅふふうふ」

気持ちが悪い。笑うたびに涎が弾き飛びより汚く見える。

「あたしがこのメタングに執着するのは頑丈な体を持っているからですよお。あ、特性じゃなくて健康的って意味ですよぎゅふ。あたしの実験ではすうぐに駄目になりますからねぇ、丈夫な子でいてくれると無駄な時間も省いてできますからあ。」
「もしかして、今までそうやって捕まえてきたポケモンたちは・・・」
「ぎゅふふ、はあい。想像しているとおりだと思いますよおお?みいんなきれいに使ってあげましたぎゅふふふ、あひゃあひゃはやひゃは!!」

腹が立つ。頭に血が昇っておかしくなりそうだ。こんな人間がこの世に存在しているなんて、同じ種類の生き物だなんて考えただけで死にたいくらいムカつく!それでもこの拘束具はとけず、もぞもぞと芋虫のようにしか動けない。その無力さが、ずっと仲間たちに頼ってばかりだったんだということを思い知らされて、次第に目から涙が溢れてくる。
悔しい、悔しい、悔しい!!!こんな奴に、こんな奴に私の仲間たちが、あのメタングがボロボロにされて、弱らされて、苦しめられて、最後には殺されてしまうなんて、ここは地獄ではないか。

「さあて、そろそろ始めるとしますかあ。時間が押されてますし、その間に思いついたこといろいろやってみたいですしぎゅふふふうふ!!」

男の手にメスが握られる。キラリと光るそれはそのままメタングに振り下ろされて、そこからは真っ赤な血液がだらだらと溢れ出る。ぐったりしている彼女は本当に力が残っていないようで叫ぶことすらしなかった。それでもその光景を目の当たりにするのは辛くて、思わず目を背けてしまった。
そっと目を戻し、みるとさっきの部分に変な輪っかがはめられている。何だあれは、彼女が言っていたナンバリング?いや、数字のようなものは目には見えない。だとしたらあれは・・・?

「ぎゅふ、さっそくあなたのポケモン一体つかいましょうかねえぎゅふ、ぎゅふうふふふ!」
「やめろ!!」

反射的に言葉が出る。だがそんな言葉もあの男は「あひゃひゃひゃああああ!いい!いいですよおその声!あたしそういう声大好きです!!」といってむしろやつのモチベーションを上げてしまうことに。
そして選ばれたのは火六。カプセルから液体と一緒に流れ出てきた火六はぐったりしておりその足に何かをつけられる。メタングと同じような変な輪っか。眉間にシワを寄せその様子を見ていると、男は楽しそに説明してきた。

「気になってるようだねえ。ぎゅふ。この馬につけたのはポケモンの制御装置。簡単に言えばなんでも言う事を聞くようになるんだよお。勿論誰のポケモンでもね。
そしてあの台のやつにつけたのがポケモンの強化装置。強制的に力を上げさせるんだよお?あひゃっひゃ。どっちもまだ完成はしていないからねぇ、それで何度も実験しているわけだよ
さあて、じゃあ、やりまそかねえ。」

あなぬけ紐を使った時に見たあの男。その時の笑い方をするこの男に、次第に恐怖するようになった。勿論怒りもある。それと同時に恐怖が、ゾワゾワとはい出てくるのだ。
助けて。どうして、私が。私たちがこんな目に遭うのだ。つま先でもそれは入ったのことになるのか
「さてさてさて、でははじめましょうかねえ。」

誰か・・・


「助けて・・・!」

ドッオオオオオオオオオオオオンン!!!

その瞬間、壁が破壊され、土埃が巻い視界が遮断する。

「ふう、さて問題のやつはここにいるのね。」
「ちょ、ちょっとシロナさんやりすぎじゃ・・・・」
「馬鹿ねぇ、こういうのは全部破壊するつもりでやらなきゃダメよ。分かった?ヒカリちゃん」
「そうなんですか・・・。はい!今度があればそうします!」

土煙にふたり分の影が映り、どうやらどちらとも女性のようだ。それにシロナって名前もしかして・・・・

『アンコ!』

火六の声がする。かなり焦っている声だ。でもあの装置をつけられたんじゃ。大丈夫なのだろうか。



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